第33章 恋情増幅(R18)
「と、とにかく大丈夫だから!またね!」
言い切るというより、ほとんど押し切るような声だった。
ユカリはそれだけ言うと、爆豪の返事を待たずに通話を切った。
ツーツー、という無機質な音が部屋に響く。
「……はぁ…っ!」
限界だった。
ユカリはそのままベッドに倒れ込み、枕にぎゅうと顔を押しつけた。
(今のは違う、今のは事故、事故、事故……)
頭の中で呪文のように必死に繰り返す。
だが、そうして抗おうとすればするほど、さっき自分が落とした声が鮮明に蘇ってきてしまう。
いつもよりずっと小さくて、どこか熱を帯びた、酷く心細そうな声。
自分の声なのに自分のものではないみたいだった。
「最悪だ……」
枕の隙間から小さく呻きを漏らす。
ユカリはこれ以上見たくないと言わんばかりに、スマホを枕の下へと力任せに押し込んだ。
***
同じ頃。
少し離れた爆豪の自室。
通話は突然切れたまま、画面は暗く戻っていた。
「……あ?」
短く、不機嫌な声。
眉間の皺が深く刻まれる。
「切りやがった」
軽く舌打ちをしながらスマホを見下ろす。
いつもなら、一方的に通話を切られた苛立ちだけで終わるはずだった。
だが。
切れる直前に鼓膜を揺らしたあの声が、どうしても耳の奥から離れない。
『……爆豪くんに会いたい……』
聞き間違いじゃない。
あの声のトーンも、間も、確かにユカリだった。
(……あいつ、あんな声出すやつだったか)
普段のユカリは、もっとはっきりしていて、落ち着いていて、感情をちゃんと整理してから言葉にするタイプだ。
なのにさっきのは違った。
勢いでも冗談でもなくて。
ほんの一瞬だけ、こぼれたみたいな声。
しかも――やけに耳に残る。