第33章 恋情増幅(R18)
『お前、今日あのスーパーいたんだろ』
「うん……いた」
普通の会話のはずなのに、心臓が落ち着かない。
『ニュースで見た。ヴィラン出たって聞いたぞ』
いつも通りの乱暴な、だけど確かに自分を案じる言葉。
『………無事なんだろうな』
それを受け止めた瞬間、胸の奥が変に熱くなっていく。
声が聞こえるだけで、物理的な距離なんてないはずなのに。
近い。
頭がくらくらするほど、彼が愛おしくて。
近すぎる。
そのまま、無意識に言葉が零れた。
「……爆豪くんに会いたい……」
一瞬、世界が止まる。
自分で言ったはずなのに、まるで別の誰かが囁いたような。
甘く切実な声だった。
「……はい!?」
次の瞬間、ユカリはベッドから弾かれたように飛び起きていた。
自分の放った爆弾発言に、自分で全力のツッコミを入れる。
通話の向こうで、爆豪が息を呑み、完全に絶句する気配が伝わってきた。
『……は?』
完全に素で戸惑っているのが分かる。
ユカリは顔を真っ赤に染め、慌てて両手で自分の口を塞いだ。
(ちがう、今のは違う、絶対に違う)
心臓がうるさいほど警鐘を鳴らしている。
だが、ここで「ヴィランの個性で好意が増幅されてる」なんて説明したら、それこそ話がややこしくなるに決まっている。
絶対に個性のことは隠し通さなければならない。
『……おい、今なんつった』
少しの間の後、爆豪の声が一段と低くなる。
「い、いや今のは違うの!ほんとに違くて!ほ、ほら、なんか今日いろいろあって頭がちょっとフワフワしてるっていうか!スーパーであんなことがあったから!」
否定すればするほど、怪しさが倍増していく。
『あ?意味わかんねぇこと言ってんじゃねぇ』
いつも通りの苛立った声。
それなのに。
その不機嫌さすら今のユカリには猛毒のように甘く響く。
また、胸の奥がきゅんと鳴った。
(何なのこれ……明日まで、ずっとこの調子なの……!?)
スマホを握りしめる手が、小刻みに震える。
ユカリは冷や汗を流しながら、絶望と共に静かに悟りかけていた。
これは思っていたよりも、だいぶ。
いや、壊滅的にまずいかもしれないと。