第33章 恋情増幅(R18)
爆豪の、すべてを射抜くような真っ直ぐで苛烈な目。
轟の、何を考えているのか読めない静かで綺麗な横顔。
(なんで今思い出しちゃうの………)
考えないようにすればするほど、逆に鮮明になる。
「まあ、その様子だと一人には絞れそうにないか、あるいは自覚していない『気になる相手』が複数いるらしい」
ヒーローの指摘に、ユカリは心臓を掴まれたように息を呑んだ。
彼は腕時計へと視線を落とす。
「今が18時20分だから……」
そのまま手元のスマホを開き、メモ帳と照合するように視線を素早く動かす。
その頭脳は、すでに最悪のシナリオを回避するための“計算”に入っていた。
「ヴィランと接触したタイミングから逆算して、個性付与はこの時刻。持続時間は24時間」
淡々と、しかし確実に外堀を埋めるように、指先で画面を操作していく。
「ということは――明日の18時までだ」
そこで指を止め、ヒーローは顔を上げた。
ユカリを射抜くような、鋭く真剣な眼差しが向けられる。
「それまでの丸一日、君が今思い浮かべた相手には絶対に近づかないように」
突きつけられた厳格なルール。
一瞬の静寂がその場を支配した。
だが――その張り詰めた空気を、またしてもミリオの笑い声が打ち破る。
「え、それ無理じゃない?」
つられるように、ねじれも「あはは!」と肩を揺らして吹き出す。
「無理だよね〜! だって爆豪くんと轟くんの方から来るもんね、絶対!」
「だよねぇ!」
なぜか本人たち以上に自信満々な二人は、妙に確信に満ちた声を弾ませて笑い合う。
そんないつも通りの温度感に、環は頭を抱えるようにして小さく溜息を吐いた。
一方、担当ヒーローは、お気楽に盛り上がる彼らを見回して、さらに深く、重いため息を一つ。
「……それも含めて、大問題だと言っているんだ」
ユカリはその会話を聞きながら、乾いた笑みを浮かべるしかなかった。
スーパーの外では、夕方の風がゆっくりと流れている。
何も知らない街だけが、いつも通りの顔をしていた。