第33章 恋情増幅(R18)
ミリオも、ねじれも、環も。
先ほどのハッタリに見えた光の礫が「ただ事ではない」と察し、一斉にユカリへと鋭い視線を向けた。
担当ヒーローは、小さく、重い息を吐き出した。
「やっぱりか……」
疲れたような、それでいて予想通りだと言わんばかりのため息。
そして端末を操作する指が、少し速くなる。
「少し待って」
画面に表示されたデータベースを素早くスクロールし、該当情報を引き当てる。
その動きは慣れていた。
こういう“後から効いてくるタイプ”の個性は珍しくないのだろう。
やがて、ヒーローは画面をこちらに向けた。
そこに表示されていたのは。
簡潔な文字列だった。
個性:恋情増幅
効果時間:24時間
概要: 対象の「好意」および「気になる相手への感情」を一時的に増幅させる。
補足: 距離が近いほど効果は強くなる。 一定距離を下回ると増幅は急激に上昇し、制御困難領域へ移行。 最大出力時は理性による抑制が困難となり、行動制御不能に至る場合あり。
ユカリが固まる。
ミリオも固まる。
ねじれも固まる。
環は既に最悪な予感しかしなかった。
数秒の沈黙。
最初にそれを破ったのはねじれだった。
「え、なにこれなにこれ!?」
身を乗り出すねじれとは対照的に、ミリオは「ははは!」と豪快に笑い出した。
「あのヴィラン、こんな個性持ってたの!? 参ったな!」
場を和ませようとするかのような明るい笑い声。
しかし、当事者であるユカリはまだ現実を受け止めきれずに硬直している。
ヒーローはもう一度、深く息を吐き出した。
「要するに、“好意を強制的に押し上げるタイプ”だ。しかも短時間じゃない」
冷静な視線がユカリに向く。
「当たったんだね?」
ユカリは、恐る恐る小さく頷いた。
「……肩に、何か軽いのが」
「それだ」
即答だった。
ヒーローはパタンと音を立てて端末を閉じる。