第33章 恋情増幅(R18)
***
スーパーの外には、既に黄色い規制線が張られていた。
サイレンの音が重なり、パトカーとヒーローの車両が住宅街の静けさを押し流していく。
ヴィランはすでに引き渡され、警察車両の後部へと押し込まれている。
抵抗する気力もなく、ただ項垂れたまま連行されていった。
その様子を確認してから、担当ヒーローが一歩前に出る。
落ち着いた年齢のプロヒーローだった。
現場慣れした動きで周囲を一度見渡し、四人へと視線を向ける。
「迅速な対応、感謝する。助かったよ」
短い言葉。だが、そこには未来のヒーローたちに対する確かな敬意が込められていた。
ミリオが軽く手を上げる。
「いえ! 被害も最小限で食い止められたと思います!」
ねじれはまだ少し興奮気味に周囲を見回している。
「プリンは無事だったよ!」
「そこじゃない」
環が静かにツッコミを入れた。
その横で、ユカリはすでに周囲の避難状況や店舗の破損状況を観察していた。
いつもの癖のように、頭の中で報告書の下書きが組み上がっていく。
「一般のお客さんの避難は完了しています。負傷者の状況は――」
「軽傷が数名だ。君たちの誘導が迅速だったおかげで、パニックによる二次災害も防げた。問題ないよ」
担当ヒーローが即座に補足する。
その声には、大ごとにならずに済んだという明確な安堵が混じっていた。
そして。
ふと、彼の視線がユカリの肩のあたりでピタリと止まる。
「……ところで」
少しだけ間を置き、彼はポケットから警察のデータベースと連動した小型の電子端末を取り出した。
画面に表示されたヴィランの固有データを確認しながら、ユカリに問いかける。
「何か、妙な術をかけられなかったかい? 例えば、こんな……」
そう言いながら、彼は指先で空中に“小さな光がパッと弾けるような形”を小さく描いてみせた。
ほんの数センチ。
指の隙間に収まる程度の、曖昧でささやかなジェスチャー。
それを見た瞬間。
ユカリの表情が、わずかに止まった。
「………あ」
こぼれ落ちた、短い声。
その一拍だけで、現場の空気がピリリと張り詰める。