第33章 恋情増幅(R18)
だが。
床に組み敷かれ、完全に身動きを封じられたはずのヴィランが、喉の奥で低く笑った。
「くくっ……くはは……」
周囲の歓声とはあまりにも不釣り合いな、不気味な笑い声。
「?」
ミリオが怪訝そうに眉をひそめる。
ヴィランは身動きが取れない狂気の中で、ぎろりとユカリを睨みつけた。
「最後に……一つ、当ててやるよ」
ヴィランの拘束を免れた指先から、ぽつんと小さな光が放たれた。
それは本当に小さく、弱々しい光。殺傷能力など微塵も感じられない、避ける必要すらなさそうな光の礫。
だが、その光はまっすぐに飛び、ユカリの肩へと当たった。
ぱしっ。
軽い音が響く。
「……え?」
ユカリが身構えたものの、その光は爆発するでもなく、肌を焼くでもなく。
ただの霧のように、儚くその場に溶けて消えてしまった。
残ったのは、得体の知れない奇妙な違和感だけだった。
その後、ヴィランは駆けつけた警察によってすぐに連行されていった。
店外のパトカーの赤色灯を見つめながら、ミリオが首を傾げる。
「さっきの光、一体何だったんだ? 攻撃って感じでもなかったけど……」
「うん、全然痛そうじゃなかったよね?」
ねじれも不思議そうに肩をすくめる。
環は何も言わず、心配そうにユカリの様子をじっと見つめていた。
「うーん、何もなさそうなんだけど……」
ユカリは自分の肩を軽く回してみた。
痛みもなければ、身体が重いといった感覚もない。
至って健康そのものだ。
「うん、全然平気。何ともないよ。ただのハッタリだったのかも?」
笑顔を見せるユカリ。
しかし。
その言葉が間違いであったことは、すぐに思い知らされることになる。
こちらへと向かっている、この事案の担当プロヒーローによって――