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【ヒロアカ】MY SWEET HEROES

第32章 退院





その時だった。

「チッ」

聞き慣れた舌打ちが教室に響く。

ユカリがそちらを見ると、窓際の席で頬杖をついた爆豪がこちらを見ていた。

ぶっきらぼうな表情はいつも通り。

けれど、その赤い瞳だけは、ユカリの様子をしっかりと確かめるように見つめていた。

「怪我はもういいんか」

短い一言。

「うん、もう全然大丈夫」

ユカリが笑顔で答えると、爆豪は小さく息を吐いた。

「……無理すんな」

相変わらず愛想のない言い方。

けれど今のユカリには、それが照れ隠しだということがわかる。

本当はずっと心配してくれていたことも。

毎日のように病院へ来てくれていたことも。

全部知っている。

だから、ユカリは優しく微笑んだ。

「ありがとう」

その一言に、爆豪はぴくりと眉を動かした。

そしてふいっと視線を逸らす。

「礼なんざ何回もいらねぇ」

そう吐き捨てるように言うと、そのまま窓の外へ顔を向けた。

横顔しか見えなくなったけれど――耳がほんのり赤くなっているような気がする。

(……気のせいかな?)

ユカリは小さく首を傾げた。

けれど、それ以上は何も言わず、教室をゆっくりと見回す。

笑って迎えてくれる人たち。

安心したように笑う顔。

「おかえり」と言ってくれる仲間たち。

みんなが自分の無事を喜んでくれている。

こんなにも心配してくれる人たちがいる。

その事実が胸いっぱいに広がっていく。

帰ってこられて、本当によかった。

ふと、ユカリは何かを思い出したように教室の中を見回した。

そして、教室の後ろの席にいる耳郎の姿を見つける。

「耳郎さん」

「え?」

突然名前を呼ばれ、耳郎はきょとんと顔を上げた。

ユカリはそのまま耳郎のもとへ歩いていく。

何の用だろう。

不思議そうに首を傾げる耳郎の机の前で、ユカリは立ち止まった。

そして、まっすぐ彼女の目を見て微笑む。

「ありがとう」

「……へ?」

あまりにも予想外の言葉に、耳郎は目を丸くした。

「出久くんから聞いたの」

ユカリは穏やかな声で続ける。

「林間合宿の時、みんなに知らせてくれたのは耳郎さんだって」

その言葉に耳郎は少しだけ目を見開く。



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