第31章 病院
「で」
爆豪が口を開く。
「?」
「何考えてんだ」
ユカリは顔を上げる。
爆豪は真っ直ぐこちらを見ていた。
「戻ってからずっとだ」
ユカリは少し目を丸くする。
「……そんなにわかりやすい?」
「わかる」
間髪入れない即答。
「考え事してる顔だ」
ユカリは苦笑する。
みんなに隠していたつもりだった。
でも、この人には隠せないらしい。
爆豪は何も急かさない。
黙ったまま待っている。
その沈黙が、不思議と話しやすかった。
ユカリは再び窓の外へ目を向ける。
群青色の空はさらに深みを増し、夜がゆっくりと街を包み始めていた。
遠くで街の灯りが一つ、また一つと灯っていく。
その景色を眺めながら。
ぽつりと呟いた。
「もし」
「…………」
言葉が喉で止まる。
迷う。
怖い。
でも。
聞いてみたかった。
「もし私が」
「今の私じゃなかったら」
爆豪の目が少しだけ細くなる。
「ヴィラン連合みたいな環境で育ってたら」
静かな病室。
夜風がカーテンを揺らす音だけが聞こえた。
「私も……あっち側だったのかなって」
それは、少し複雑になったユカリの世界の話。