第31章 病院
笑い声が絶えないその空間で、突然――
「あ、そうそう!」
光己が何かを思い出したように勢いよく立ち上がった。
椅子が少しだけ音を立てる。
「ユカリちゃんのこと、雑誌で見たのよ!」
ぱん、と手を叩くと、足元に置いてあった大きめのトートバッグへ身を屈めた。
「あれどこだっけ……」
ごそごそと鞄の中を探る。
財布やポーチ、小さなエコバッグをどけながら、ようやく一冊の分厚い雑誌を取り出した。
表紙には今をときめくプロヒーローたちと、将来を期待される学生ヒーロー候補たちが大きく載っている。
光己は得意げに掲げた。
「これこれ!」
「……?」
ユカリは目をぱちぱちと瞬かせ、小首を傾げる。
「次世代ヒーロー特集!」
表紙をこちらへ向けられた瞬間。
「あ……」
思い出した。
有名なヒーロー専門誌。
全国のヒーロー科から選ばれた有望株だけが取材される人気企画。
プロヒーロー候補として、自分も取材を受けたのだった。
発売日は確か今週。
まだ読んでいないユカリは、どんな内容になっているか知らない。
「面白かったのよ~!」
光己はページをぱらぱらとめくりながら興奮気味に笑う。
「最後に『関係者匿名コメント』ってコーナーがあってね!」
そのページを見つけると、人差し指を一本立てて芝居がかった仕草をした。
「まず一人目!」
わざとらしく咳払いを一つ。
病室の視線が自然と光己へ集まる。
爆豪も腕を組んだまま、ちらりと雑誌へ目を向けた。
「『彼女は本当にすごい人です!!』」
読み始めた瞬間から、いかにも勢いのある文章だった。
「『廊下を歩いてるだけで後輩から"ユカリ先輩!"って囲まれるし、困ってる子を見つけたら絶対放っておかない!』」
「『この前なんて、お昼食べようとしたのに、一年生の相談を聞いてたら休み時間終わってました!!』」
「……あったかも」
ユカリから苦笑いが漏れる。
確かにそんな日があったと思い出す。
「『しかも本人は全然気づいてないけど、他のクラスの男子が廊下で待ってたりします!告白しようとしてる人も何人も見ました!でも近寄れなくて帰ってました!いや〜青春だよねぇ!!』」
ユカリの動きがぴたりと止まる。
待ってこれミリオじゃないの?