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【ヒロアカ】MY SWEET HEROES

第31章 病院





その時だった。

「顔を上げてくれ」

父親が穏やかな声で言った。

爆豪がゆっくり顔を上げる。

そこにあったのは怒りではなかった。

責める視線でもない。

父親は静かに笑っていた。

優しく。

安心させるように。

「君が謝ることじゃない」

爆豪は眉がわずかに寄る。

納得できないという顔だった。

父親は続ける。

「君は助けに行ってくれたんだろう?」

「………」

「危険だってわかってたのに」

爆豪は答えない。

けれど否定もしない。

「それでも行ってくれた」

父親の声は静かだった。

そして。

父親は頭を下げた。

今度は父親の方が。

爆豪へ向かって。

「ありがとう」

爆豪の目が見開かれる。

完全に予想外だった。

責められる覚悟も。

怒鳴られる覚悟もしていた。

それでも。

返ってきたのは感謝だった。

母親も微笑む。

「本当にありがとう」

優しい声だった。

「娘を連れて帰ってきてくれて」

爆豪は何も言えなくなる。

どう反応していいのか分からなかった。

戦うことには慣れている。

怒鳴られることにも慣れている。

だがこういう言葉には慣れていない。

感謝されること。

真っ直ぐ礼を言われること。

それをどう受け取ればいいのか分からなかった。

だから珍しく固まっていた。

ユカリはそんな爆豪を見て思わず小さく笑う。

本当に珍しい。

いつも誰より堂々としていて。

誰にも怯まなくて。

何を言われても言い返す爆豪が。

今だけは少し困っていた。

「……別に」

ようやく絞り出した言葉は小さかった。

視線を逸らしたまま言う。

「当たり前のことしただけです」

父親が笑う。

母親も笑う。

ユカリも笑った。 

爆豪だけが居心地悪そうに眉をひそめる。

耳は少し赤かった。


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