第31章 病院
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ねじれが帰った後、病室は再び静かになった。
とはいえ、その静寂も長くは続かない。
しばらくして病室の扉が開き、ユカリの両親がやって来たからだ。
「ユカリ!元気そうでよかった……!」
母親は病室に入るなり、ベッドの側まで駆け寄ると、そのままユカリをぎゅっと抱きしめた。
父親もその後ろからゆっくり歩いてくる。
「本当に心配したんだからな」
「ごめんね」
ユカリはベッドの上で苦笑する。
父親は椅子に座りながらすぐ隣の母親を指差した。
「お母さん、ご飯食べながら泣いてたんだぞ」
「ちょっと!」
母親が即座に反応する。
「お父さんだって泣いてたじゃない!」
「いや俺は泣いてないぞ」
「泣いてたわよ!」
まるで子供みたいな言い争いだった。
ユカリは思わず吹き出す。
病室の中に笑い声が広がる。
自分を大事にしてくれる両親。
心配性な母。
娘に甘い父。
誘拐されてからずっと緊張していた心。
それがみんなのおかげでほどけていく。
「あ、検査も問題ないって先生が言ってたよ」
ユカリがそう言うと、母親は目を丸くした。
「そうなの?」
「うん」
「本当によかった……」
母親は胸に手を当てて大きく息を吐く。
その様子に、どれほど不安だったのかが伝わってきた。
父親も安心したように頷く。
「帰ったら好きなもん食わせてやる」
「やった」
ユカリの顔が明るくなる。
「寿司か?」
「うん。お寿司食べたい」
「よし、回らないやつだな」
「お父さん調子乗らないで」
「乗ってない」
「乗ってるわよ」
こんな何気ない時間が、こんなにも嬉しいなんて思わなかった。
もう二度と戻れないかもしれない。
そう考えた夜があったからこそ、余計に。
その時だった。
コンコン。
病室の扉がノックされる。
三人は同時に振り返った。
夕日の光が扉を薄く照らしている。
「どうぞ」
ユカリが声をかける。