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【ヒロアカ】MY SWEET HEROES

第31章 病院




***

病院の個室は静かだった。

窓の外では夕方の光が少しずつ柔らかくなっている。

ユカリはベッドに腰掛けたまま、自分の右手を見つめていた。

何度も。

何度も。

指を開いては閉じる。

ゆっくり握り込んで、また開く。

どうしても思い出してしまう。

あの日。

ヴィラン連合に連れ去られた瞬間。

黒霧のゲートが目の前に広がった時の絶望。

周囲の景色が歪み、足元が消えていく感覚。

爆豪と轟が手を伸ばしてくれたこと。

出久が必死に叫んでいたこと。

でも届かなかった。

ユカリはまたゆっくり手を握る。

そして思い出す。 

助けに来てくれた時のことを。

崩壊する研究施設。

耳をつんざく爆発音。

砕けるコンクリート。

冷たい夜風。

真っ暗な空。

落下していく身体。

あの時。

諦めたくなくて。

必死に手を伸ばした。

そして。

掴んでくれた。

絶対に離さないと。

強く。

力強く。

ユカリは小さく息を吐く。

胸の奥がじんわり熱くなる。

考えなきゃいけないことが沢山ある。

爆豪のこと。

轟のこと。

自分の気持ち。

全部だ。

ちゃんと向き合わなきゃいけない。

静かな病室にノックの音が響く。

ユカリは顔を上げた。

「はーい」

返事をすると、勢いよく扉が開く。

「ユカリー!」

聞き慣れた明るい声。

そこに立っていたのはねじれだった。

両手いっぱいに大きな紙袋を抱えている。

「ねじれ!」

ユカリの顔がぱっと明るくなる。

さっきまで考え込んでいた空気が一瞬で吹き飛んだ。

「お見舞い持ってきたよー!」

「ありがとう」

「それとね!」

「うん?」

ねじれは真剣な顔で言った。

「ユカリがいなくて寮が静かすぎた!」

「それお見舞いじゃなくて苦情じゃん!」

思わず笑う。

久しぶりに声を出して笑った気がした。

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