第30章 反省文
「お前らがやったことは独断行動だ」
低く落ち着いた声。
けれど。
その声には普段よりも重い圧があった。
「警察もプロヒーローも動いていた」
「それを無視して突入した」
正論だった。
誰も反論できない。
「一歩間違えば死んでた」
相澤の言葉が静かに部屋に落ちる。
「お前らだけじゃない。ユカリもだ」
五人が俯く。
その通りだった。
結果論でしかない。
成功したから良かった。
失敗していたら。
今ここには誰もいないかもしれない。
相澤は大きくため息を吐く。
「本当に馬鹿だ」
珍しく感情が混じる。
教師として怒っている。
心配したから怒っている。
捜索中、何度も最悪の想像をした。
生徒たちが瓦礫の下敷きになる姿も。
帰ってこない未来も。
だからこそ怒っている。
「すみません……反省してます……」
出久が小さくなる。
「当然だ」
その時。
会議室のドアが開く。
全員が顔を上げる。
入ってきたのは根津校長。
いつもの小さな体に蝶ネクタイ。
「いやぁ、素晴らしい連携だったね」
校長はにこにこと笑う。
五人が固まる。
相澤が頭を抱えた。
「校長」
「もちろん無許可行動は大問題だよ?」
満面の笑顔。
「でも映像見た?完璧だったよ?」
相澤がさらに頭を抱える。
「だからそこを褒めないでください」
「だって本当に凄かったんだもん」
「褒めないでください」
出久たちは困惑する。
怒られてるのか。
褒められてるのか。
わからない。
すると相澤が立ち上がった。
「とにかく。全員反省文だ」
逃さないと言わんばかりの圧を纏って。
「原稿用紙五十枚」
「えっ?」
出久も。
「五十!?」
ミリオも。
「……終わった」
環も。
「……多いな」
轟も。
「チッ、多すぎんだろ」
爆豪も。
みんなその枚数に驚きを隠せない。
「百枚にするか?」
「すみませんでした」
五人揃って頭を下げる。
そんな様子を見ながら。
相澤は小さく息を吐いた。
怒っている。
本当に怒っている。
けれど。
心のどこかでは。
少しだけ安心していた。
馬鹿な生徒たちが。
全員。
ちゃんと生きて帰ってきたことに。