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【ヒロアカ】MY SWEET HEROES

第29章 救出




***

建物は完全に崩壊していた。

かつて研究施設だったものは、今や瓦礫の山でしかない。

煙が立ち昇り、あちこちで火花が散る。

戦いは終わった。

少なくとも、今は。

黒い靄が静かに広がる。

黒霧のゲート。

撤退のための出口だった。

トガは最後まで名残惜しそうに振り返る。

「ほんとに帰るのー?」

「帰るんだよ」

荼毘が面倒そうに答える。

トガは頬を膨らませた。

その時だった。

「あ」

トガが声を上げる。

少し離れた瓦礫の向こう。

ヒーローたちの姿が見えた。

中心にいるのはユカリ。

無事だった。

抱きしめているミリオ。

頭を撫でる環。

安心して泣く出久。

無事を確認し続ける轟。

そして誰より近くから離れない爆豪。

誰もがユカリを囲むように立っていた。

自然と。

当たり前のように。

ユカリが中心だった。

死柄木は黙ってその光景を見る。

――そうだ。

最初からそうだった。

あいつは人を引き寄せる。

誰かの中心になる。

守りたいと思わせる。

信じたいと思わせる。

だから。

眩しかった。

だから。

最後まで悩んだ。

だけど。

結局そこが一番似合う。

ヒーローたちの輪の中。

仲間に囲まれて笑う場所が。

その時。

ユカリがふと顔を上げた。

まるで気配を感じたみたいに。

視線が合う。

かなり距離はある。

それでも。

確かにこちらを見た。

「ユカリちゃーん!」

トガがぶんぶんと手を振る。

満面の笑顔で。

まるで友達に別れを告げるみたいに。

荼毘は隣で腕を組んだまま鼻を鳴らす。

何も言わない。

ただじっと見ている。

トゥワイスは大きく手を上げた。

「元気でな!」

「いや元気じゃ困るな!」

一人で騒いでいる。

コンプレスは帽子を取る。

そして優雅に一礼した。

まるで舞台の幕が下りる時のように。

誰もがそれぞれのやり方で別れを告げていた。


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