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【ヒロアカ】MY SWEET HEROES

第29章 救出




死柄木だけは違う。

何もしない。

手も振らない。

言葉もない。

ただ見ている。

ユカリの姿を。

仲間たちに囲まれた姿を。

その光景を目に焼き付けるように。

ユカリも何も言わなかった。

ただ静かに見返していた。

風が吹く。

崩壊した建物の上を。

二人の間を静かに通り過ぎる。

「行くぞ」

死柄木が言う。

短く。

それだけ。

トガが頷く。

荼毘が踵を返す。

トゥワイスがゲートへ飛び込む。

コンプレスも続く。

最後に。

死柄木はもう一度だけユカリを見る。

【もし】

そんな言葉は意味がない。

自分はヴィランだ。

あいつはヒーローだ。

交わることはない。

それでも。

ほんの少しだけ。

ユカリと出会ったことを後悔していなかった。

死柄木は目を伏せる。

そして。

黒い闇の中へ足を踏み入れた。

その姿はゆっくりと溶けるように消えていく。

最後まで振り返ることはなかった。

黒霧のゲートが閉じる。


静寂。


そこに残されたのは瓦礫と。

終わった戦いの痕跡だけだった―――


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