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【ヒロアカ】MY SWEET HEROES

第29章 救出




***


ユカリは急いで通路を駆け抜ける。

背後では爆発音が響いて。

階下からは戦闘音が聞こえてくる。 

一番奥にある非常階段。

その扉を体で押し開ける。

重たい金属音が響いた。

息を切らしながら階段へ飛び込む。

下は敵だらけだ。

なら上しかない。

選択肢なんてなかった。 

踊り場を曲がり、上を目指す。

鉄の階段を駆け上がるたび、靴音が狭い空間に反響する。

息が苦しい。

それでも足は止まらない。

そして。

最上階のさらに上。

屋上へ続く鉄扉が見えた。

「……っ」

ユカリは勢いよく取っ手を掴んで開いた。


ギィィ――――


重い音。

夜風が吹き込む。

屋上。

月明かり。

雲ひとつない夜空。

大きな満月が浮かんでいた。 

その光の中。

一人の男が立っている。

ユカリの足が止まった。

「……死柄木」

白い髪。

赤い瞳。 

痩せた身体。

風に髪を揺らしながら、死柄木弔は静かにこちらを見ていた。

まるで最初から待っていたかのように。

ユカリは息を呑む。

下では激しい戦闘音が続いている。

だが。

この屋上だけは妙に静かだった。

満月の光が二人を照らす。

死柄木はしばらく何も言わなかった。

ただユカリを見る。

その視線には敵意も殺意もない。

むしろ。

どこか寂しそうですらあった。

やがて。

死柄木がゆっくり口を開く。

「お前、逃げてきたんだろ」

静かな声。

荼毘がいない。

何も知らないユカリの様子からして、意図せずここへ来たんだろう。

だが、死柄木はそれでも良かった。

空を見上げる。

巨大な満月。

赤い瞳が月光を映す。

そして小さく笑う。

「やっぱりお前は中心だな」

意味の分からない言葉。

死柄木は再び視線を戻した。

夜風が吹く。

屋上の静寂の中。

ユカリと死柄木は向かい合った。

下では、仲間たちが必死に戦っている。

だが今。

この満月の下で対峙しているのは――

ヒーローを目指す少女と、

ヴィラン連合のリーダーだけだった。


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