第29章 救出
だが、次の瞬間―――
「かっちゃん」
出久がゆっくりと爆豪の前へ出る。
その目は真剣だった。
「ここは僕がやる」
爆豪の眉間に皺が寄る。
「ユカリ先輩のところへ一番早く行けるのはかっちゃんだ」
出久は黒鞭を構える。
「轟くんも一人じゃ危険だ」
目の前にはトガがいる。
他にも敵がいるかもしれない。
「だから行ってくれ」
ここで全員が足止めされる方がまずい。
「そして今度こそ」
出久は続ける。
「ユカリ先輩を絶対助けて」
あの日助けられなかった。
だからこそ。
今度こそ。
絶対に助ける。
その事実が爆豪を動かした。
「チッ……んなもん、当たり前だ!」
爆豪は急いで踵を返す。
それにトガが反応する。
「逃がさないよ♡」
だがその前に黒鞭が唸った。
バシィッ!!
トガの進路を塞ぐ。
出久が立ちはだかる。
「君の相手は僕だ」
トガは目を丸くした。
そして少しだけ笑う。
「出久くんってさ」
「本当にそういうところだよね」
爆豪はもう振り返らなかった。
爆破。
轟音。
階段を一気に飛び上がる。
一段飛ばしどころではない。
ユカリの元へ。
ただ真っ直ぐに。
一方、出久はトガと向き合う。
遠ざかっていく爆発音を聞きながら。
(頼んだよ、かっちゃん……!)
胸の中でそう呟き、再び戦闘態勢を取った。