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【ヒロアカ】MY SWEET HEROES

第29章 救出





轟は静かに構えた。

「その人を返せ」

荼毘は鼻で笑う。

「嫌だって言ったら?」

青い炎がゆらりと燃え上がる。

廊下の温度が一気に上昇する。

緊迫する空気。

ユカリは静かに呼吸を整えていた。

荼毘との距離。

足場。

壁。

窓。

階段。

轟との位置関係。

ユカリの視線は絶えず動いていた。

諦めない。

荼毘に一瞬でも隙ができれば。

逃げられる。

そう考えた瞬間。

「……だから」

隣から低い声がした。

ユカリが反応するより早く、荼毘の手が伸びる。

顎を軽く掴まれ、無理やり正面を向かされた。

「っ……!」

「やめとけって言ってんだろ」

荼毘は呆れたように言う。

その目は完全にユカリの思考を見透かしていた。

「お前、自分で何とかしようとしてる顔してるぞ」

また図星だった。

ユカリが何か言い返す前に、荼毘は小さく笑う。

「何日見てると思ってんだ」

その様子を見た轟の眉間に皺が寄る。

「離せ」

声が冷える。

だが荼毘は気にした様子もない。

むしろ面白そうに轟を見た。

「あ?」

そしてわざとらしく首を傾げる。

「何だよ、その顔」

轟の拳が強く握られる。

ユカリもすぐに分かった。

荼毘はわざとだ。

わざと轟を煽っている。

「離せって言ってる」

「怖ぇな」

荼毘は鼻で笑った。

「そんなに大事か?」

轟の視線が鋭くなる。

その反応を見て、荼毘の口元がさらに歪んだ。

「なるほどな」

面白い玩具を見つけた子供のような顔だった。

「思った以上の反応だ」

ユカリは嫌な予感しかしなかった。



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