第29章 救出
するとコンプレスはふと笑った。
「――正直、驚いたよ」
「何が?」
ユカリは首を傾げる。
「君に」
コンプレスは言う。
「普通なら諦める」
「だが彼らは諦めない」
「つまり、それだけ君が大事だって証拠だろう?」
静かな声だった。
ユカリは何も答えられない。
ただ、胸の奥がたまらなく熱かった。
***
その頃。
とある廃工場。
ミリオたちは現場を調べていた。
「……間違いなく使われてた」
出久が床を確認しながら言う。
新しい足跡。
食料の痕跡。
使われた形跡。
「でも移動した」
轟が静かに言う。
爆豪も舌打ちする。
「クソ」
環は目を凝らして周囲を観察していた。
その時。
「……待って」
全員が振り向く。
環は壁際へ歩くと、しゃがんで何かを拾った。
小さな紙だ。
折り畳まれている。
出久が覗き込む。
「何ですか?」
環がゆっくり開く。
―――そこには。
小さな文字。
『みんなへ』
全員が固まった。
爆豪の目が見開く。
轟も。
出久も。
ミリオも。
環が続きを口に出して読む。
『ここにはいません』
『でも私は大丈夫』
『無理はしないで』
『絶対帰るから』
見覚えのある字。
間違いなくユカリの字だった。
数秒の沈黙。
誰も喋らない。
そして。
ミリオが笑った。
本当に久しぶりに。
心から。
「やっぱりユカリだ」
環も少しだけ表情を緩める。
出久は思わず目頭を押さえた。
「ユカリ先輩……」
轟はただ紙を見つめる。
静かに。
何度も。
そして。
爆豪が紙を受け取る。
読み返す。
何度も。
何度も。
やがて。
ふっと口元が上がった。
「バァカ」
小さく呟く。
でも、その目には確かな光が戻っていた。
生きている。
戦っている。
待っている。
なら。
迎えに行くだけだ。
五人の視線が自然と重なる。
言葉はいらなかった。
ユカリを取り戻す。
その決意だけがさらに強くなっていた。