第29章 救出
「現状」
出久が地図を広げる。
「候補は三つです」
マーカーで丸印をつけた箇所を指差す。
「この廃工場」
「この倉庫街」
「それから廃病院」
ミリオが覗き込んで聞く。
「根拠は?」
出久は答える。
「ヴィラン連合は人目を避ける傾向があります」
「でも完全な孤立は避けてる」
「補給経路が必要だから」
爆豪は黙ったまま聞いていた。
出久が続ける。
「さらにユカリ先輩は治癒能力も持ってる」
「もし死柄木たちが必要としてるなら」
「生存前提で監禁してる可能性が高い」
環が小さく頷く。
「……殺す気ならその場でやってる」
全員同意だった。
それだけが救いだった。
ミリオが腕を組む。
「つまりユカリは生きてる」
「はい」
出久が即答した。
迷いなく。
「絶対生きてます」
爆豪が初めて口を開く。
「当たり前だ」
低い声。
全員がそちらを見る。
爆豪は地図を睨んでいた。
「アイツがそう簡単に折れるかよ」
その一言に誰も反論しなかった。
ユカリを知っているから。
誰よりも。
爆豪が。
轟が。
出久が。
環が。
ミリオが。
知っている。
ユカリは強い。
優しい。
そして簡単には諦めない。
「だから」
爆豪が立ち上がる。
「俺らも諦めねぇ」
静かな声。
だが全員の胸に響く。
ミリオが笑う。
「決まりだね」
轟が頷く。
環も立ち上がる。
出久が資料を閉じる。
そして。
五人の視線が重なる。
一年生。
三年生。
本来なら学年も違う。
だが今だけは違った。
全員に共通しているものがある。
ユカリを助けたい。
ただそれだけ。
「まず廃工場を調べる」
ミリオが言う。
「もし違ったら次」
「その次も」
「見つかるまでやる」
爆豪が鼻で笑う。
「最初からそうだろ」
その言葉に全員が頷いた。