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【ヒロアカ】MY SWEET HEROES

第28章 焦燥




***

寮を出た三人は無言だった。

外出禁止令。

そんなものも頭になかった。

頭の中にあるのはユカリのことだけだった。

足音だけが響く。

出久は歩きながら拳を握り締める。

ユカリが連れ去られた瞬間が頭から離れない。

最後に見た表情。

伸ばされた手。

届かなかった。

あの時の無力感が胸の奥に刺さったままだった。

轟も同じだった。

ポケットに入れた手に自然と力が入る。

ユカリはいつも誰かのために動く人だった。

困っている人を放っておけない。

だから。

だからこそ。

許せなかった。

そんな人が連れ去られたことが。 

爆豪は先頭を歩いている。

無言で。

表情は見えない。

だが二人とも分かっていた。

爆豪が一番怒っている。

一番自分を責めている。

それでも感情だけで動かない。

助けるために何が必要かを考えている。

だから今ここにいる。

やがて3年寮が見えてきた。 

夕日を背に建つ建物。

普段なら憧れの先輩たちが暮らしている場所だ。

だが今日は違う。

重い空気が漂っている。

3人は入口を抜けた。

廊下も静かだった。

誰も騒いでいない。

誰も笑っていない。

1年寮と変わらない雰囲気だった。

その時だった。

共有スペースの扉が少し開いていることに気付く。

中から声はしない。

爆豪が扉を押し開けた。

ゆっくりと。

軋む音が響く。

そして。

三人は息を呑んだ。

広い共有スペース。

ソファ。

テーブル。 

窓。

そこにいたのはミリオと環の二人だった。

ミリオはソファに座っている。

肘を膝につき、組んだ手に額を押し当てていた。

いつもの笑顔はない。

環は窓際の椅子に座っている。

外を見ているようで何も見ていない。

部屋の空気そのものが沈んでいた。

三人が入ってきたことにも気付かなかったほどに。

「通形先輩」

出久が近付いて声をかける。

ミリオがゆっくり顔を上げた。

その姿に三人は言葉を失う。

目の下には濃い隈。

髪も少し乱れている。

明らかに眠っていない。

それでもミリオは立ち上がった。

「緑谷くん」

掠れた声だった。

聞いたことのない声。

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