第28章 焦燥
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寮を出た三人は無言だった。
外出禁止令。
そんなものも頭になかった。
頭の中にあるのはユカリのことだけだった。
足音だけが響く。
出久は歩きながら拳を握り締める。
ユカリが連れ去られた瞬間が頭から離れない。
最後に見た表情。
伸ばされた手。
届かなかった。
あの時の無力感が胸の奥に刺さったままだった。
轟も同じだった。
ポケットに入れた手に自然と力が入る。
ユカリはいつも誰かのために動く人だった。
困っている人を放っておけない。
だから。
だからこそ。
許せなかった。
そんな人が連れ去られたことが。
爆豪は先頭を歩いている。
無言で。
表情は見えない。
だが二人とも分かっていた。
爆豪が一番怒っている。
一番自分を責めている。
それでも感情だけで動かない。
助けるために何が必要かを考えている。
だから今ここにいる。
やがて3年寮が見えてきた。
夕日を背に建つ建物。
普段なら憧れの先輩たちが暮らしている場所だ。
だが今日は違う。
重い空気が漂っている。
3人は入口を抜けた。
廊下も静かだった。
誰も騒いでいない。
誰も笑っていない。
1年寮と変わらない雰囲気だった。
その時だった。
共有スペースの扉が少し開いていることに気付く。
中から声はしない。
爆豪が扉を押し開けた。
ゆっくりと。
軋む音が響く。
そして。
三人は息を呑んだ。
広い共有スペース。
ソファ。
テーブル。
窓。
そこにいたのはミリオと環の二人だった。
ミリオはソファに座っている。
肘を膝につき、組んだ手に額を押し当てていた。
いつもの笑顔はない。
環は窓際の椅子に座っている。
外を見ているようで何も見ていない。
部屋の空気そのものが沈んでいた。
三人が入ってきたことにも気付かなかったほどに。
「通形先輩」
出久が近付いて声をかける。
ミリオがゆっくり顔を上げた。
その姿に三人は言葉を失う。
目の下には濃い隈。
髪も少し乱れている。
明らかに眠っていない。
それでもミリオは立ち上がった。
「緑谷くん」
掠れた声だった。
聞いたことのない声。