第28章 焦燥
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1年A組の寮には重苦しい空気が漂っていた。
昨日の事件を受けて、生徒たちには外出禁止令が出されている。
もちろん、それは正しい判断だ。
ヴィラン連合が再び動く可能性もある。
生徒を守るためには必要な措置だった。
それでも。
「……ユカリ先輩……」
出久は自室の椅子に座ったまま、何度も拳を握り締めていた。
頭の中に浮かぶのは昨日の光景。
ユカリが連れ去られていく姿。
伸ばした手。
届かなかった距離。
助けられなかった事実。
「僕がもっと早く動けてたら……」
あの時、かっちゃんは違うと言った。
間に合わなかっただけだと。
でも。
それでも。
僕が。
もっと強ければ。
もっと速ければ。
もっと冷静なら。
何か出来たんじゃないか。
そんな考えが何度も何度も頭を巡る。
眠れなかった。
食事も喉を通らなかった。
ただ一つだけ、確かな感情がある。
助けたい。
今すぐに。
その思いだけだった。
出久は立ち上がる。
部屋を出て共有スペースへ向かった。
静かな廊下。
誰も大声では話していない。
皆、昨日のことを引きずっている。
共有スペースへ入ると、そこには二人いた。
ソファに深く腰掛けている爆豪。
そして壁にもたれ、腕を組んでいる轟。
二人とも無言だった。
ユカリがいない。
その現実が空気を重くしていた。
出久は息を整えながら近付いた。
「かっちゃん、轟くん」
二人が顔を上げる。
出久は覚悟を決めて口を開いた。
「話があるんだ」
拳を握り締めている。
「このままじゃ駄目だ」
出久は真っ直ぐ前を見ていた。
「時間が経てば経つほど手掛かりは消えていく」
震える声だった。
だが強かった。
「今ならまだ間に合うかもしれない」
ユカリが連れ去られてからまだ一日も経っていない。
今なら。
まだ。
「助けに行こう」
静寂。
寮の空気が張り詰める。
出久は二人を見る。
「僕たちで」
その目は本気だった。
迷いもない。
今すぐにでも飛び出したいのだろう。