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【ヒロアカ】MY SWEET HEROES

第28章 焦燥




***

1年A組の寮には重苦しい空気が漂っていた。

昨日の事件を受けて、生徒たちには外出禁止令が出されている。

もちろん、それは正しい判断だ。

ヴィラン連合が再び動く可能性もある。

生徒を守るためには必要な措置だった。

それでも。

「……ユカリ先輩……」

出久は自室の椅子に座ったまま、何度も拳を握り締めていた。

頭の中に浮かぶのは昨日の光景。

ユカリが連れ去られていく姿。

伸ばした手。

届かなかった距離。

助けられなかった事実。

「僕がもっと早く動けてたら……」

あの時、かっちゃんは違うと言った。

間に合わなかっただけだと。

でも。

それでも。

僕が。

もっと強ければ。

もっと速ければ。

もっと冷静なら。

何か出来たんじゃないか。

そんな考えが何度も何度も頭を巡る。

眠れなかった。

食事も喉を通らなかった。

ただ一つだけ、確かな感情がある。

助けたい。

今すぐに。

その思いだけだった。

出久は立ち上がる。

部屋を出て共有スペースへ向かった。

静かな廊下。

誰も大声では話していない。

皆、昨日のことを引きずっている。

共有スペースへ入ると、そこには二人いた。

ソファに深く腰掛けている爆豪。

そして壁にもたれ、腕を組んでいる轟。

二人とも無言だった。

ユカリがいない。

その現実が空気を重くしていた。

出久は息を整えながら近付いた。

「かっちゃん、轟くん」

二人が顔を上げる。

出久は覚悟を決めて口を開いた。

「話があるんだ」

拳を握り締めている。

「このままじゃ駄目だ」

出久は真っ直ぐ前を見ていた。

「時間が経てば経つほど手掛かりは消えていく」

震える声だった。

だが強かった。

「今ならまだ間に合うかもしれない」

ユカリが連れ去られてからまだ一日も経っていない。

今なら。

まだ。

「助けに行こう」

静寂。

寮の空気が張り詰める。

出久は二人を見る。

「僕たちで」

その目は本気だった。

迷いもない。

今すぐにでも飛び出したいのだろう。

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