第28章 焦燥
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夜が明け始めていた。
東の空がわずかに白み始めている。
だが相澤にとって、朝が来たという実感はなかった。
一睡もしていない。
それでも次にやるべきことがある。
教師として。
そして今回の件の責任者の一人として。
ユカリの元担任として。
どうしても避けて通れないことだった。
ユカリの両親へ伝える。
その事実を。
相澤は車を降りた。
住宅街はまだ静かだった。
通勤の時間には早い。
鳥の鳴き声だけが聞こえる。
目の前には見慣れた家があった。
進路面談。
三者面談。
保護者会。
何度か訪れたことがある。
だからこそ足が重かった。
インターホンを押す。
数秒後。
扉が開いた。
出てきたのはユカリの母親だった。
まだ部屋着のまま。
だが相澤の姿を見た瞬間、表情が変わる。
朝早すぎる。
しかも教師が一人で来る。
良い知らせであるはずがない。
「相澤先生……?」
相澤は少しだけ視線を伏せた。
「お時間いただけますか」
その一言だけで十分だった。
母親の顔から血の気が引く。
リビングには重い空気が流れていた。
ユカリの父親も席についている。
二人とも何も言わない。
言えない。
相澤もすぐには口を開けなかった。
どんな言葉を選んでも。
傷つけることになる。
それが分かっていたからだ。
しかし。
伝えなければならない。
「昨日の林間合宿で」
相澤が静かに話し始める。
「ヴィラン連合による襲撃がありました」
母親の肩が震えた。
父親の拳が握られる。
相澤は続ける。
「教師陣とプロヒーローが対応しましたが……」
そこで一度言葉が止まった。
喉が重い。
だが、逃げるわけにはいかない。