第27章 ヴィラン連合
そこは思っていたより普通の部屋だった。
机。
椅子。
古いソファ。
壁にはいくつかの地図や資料。
まるで作戦会議室のような場所。
死柄木はソファに座っていた。
首を掻いている。
いつもの癖だ。
ユカリが入っても特に反応しない。
しばらく沈黙が流れる。
先に口を開いたのはユカリだった。
「……さっきの話」
死柄木の手が止まる。
「仲間を失ったって」
静かな声。
死柄木は少しだけ笑った。
「聞いてたのか」
「うん、聞こえた」
「そうか」
それだけだった。
ユカリは気になって続ける。
「……誰のこと?」
死柄木は少しだけ天井を見上げる。
まるで昔を思い出しているようだった。
「いっぱいだ」
ぽつり。
「いっぱい失った」
部屋が静かになる。
「ヒーローに捕まった奴」
「死んだ奴」
「壊れた奴」
「消えた奴」
どれも短い言葉。
けれど。
その一つ一つに重さがあった。
ユカリは黙って聞いていた。
死柄木は続ける。
「お前らヒーローは」
「人を助ける」
「正しい」
「立派だ」
そこで笑う。
「でも」
「全員は助けない」
ユカリの眉が動く。
死柄木は机の上にあったペンを手に取って指先で弄ぶ。
「助けられる人間だけ助ける」
「助けられなかった奴は切り捨てる」
「それが社会だ」
その声には怒りが混じっていた。
ユカリは反論しようとして止まる。
言葉が出なかった。
ヒーロー社会に欠点がないとは思っていない。
救えなかった人もいる。
実際に。
トゥワイスも。
トガも。
社会のどこかで零れ落ちた。
それは事実だ。
「……だから壊すの?」
ユカリは聞いた。
死柄木は少しだけ目を細める。
「最初はな」
意外な答えだった。
「最初は全部壊したかった」
「全部」
「何もかも」
ユカリは息を呑む。
死柄木は続ける。
「でも」
少しだけ視線が落ちる。
「仲間ができた」
その言葉にユカリは驚いた。
死柄木が仲間という言葉を使う時。
その声音だけ少し違う。