第26章 林間合宿
死柄木が顔を上げる。
「……チッ」
珍しく露骨に舌打ちした。
気配。
音。
複数。
しかも速い。
思った以上に早い。
相澤たちが連合の狙いに気付いたのだ。
「黒霧」
死柄木が振り返る。
「早くしろ」
「承知しました」
黒霧の体が揺らめく。
漆黒の霧が広がり始める。
その瞬間だった。
轟音。
森の木々が吹き飛ぶ。
爆発。
氷。
そして全力疾走の足音。
ほぼ同時。
三方向から人影が飛び込んできた。
「ユカリ!!!!」
爆豪が。
「先輩!!」
轟が。
「ユカリ先輩!!」
出久が。
三人とも息を切らしていた。
全力でここまで来たのがわかる。
死柄木は心底面倒そうな顔をした。
「来たか」
だが、黒霧の霧がユカリの足元まで広がる。
ユカリが目を見開く。
まずい。
そう思った時にはもう遅い。
霧が体を飲み込みはじめる。
「待て!!」
轟が走る。
「クソがァ!!!」
爆豪も飛ぶ。
出久も叫ぶ。
「ユカリ先輩!!!」
三人が同時に手を伸ばした。
あと少し。
本当にあと少しだった。
指先が届きそうだった。
「……っ!」
ユカリも反射的に手を伸ばす。
爆豪へ。
轟へ。
出久へ。
だが。
届かない。
霧が全身を包む。
視界が黒く染まる。
「ユカリ!!!!!」
爆豪の怒声。
「先輩!!」
轟の叫び。
「ユカリ先輩!!!!!」
出久の声。
その全てを最後に。
ユカリの姿は黒霧の中へ消えた。