第26章 林間合宿
その瞬間、爆豪が地面を蹴った。
「クソが……!」
顔には怒りが浮かんでいた。
轟も拳を握り締める。
出久は歯を食いしばった。
西側森林区域ならここからそう遠くはない。
行かなければ。
助けなければ。
三人とも同じことを考えていた。
だが。
目の前にはまだ敵がいる。
怪我人もいる。
ヒーローとして見捨てるわけにはいかない。
「チッ……!」
爆豪が舌打ちをする。
珍しく迷いが見えていた。
轟も唇を噛む。
出久は負傷者へ視線を落とした。
無理だ。
この人は足を怪我している。
一人では動けない。
置いていけるわけがない。
―――その時だった。
「行けぇ!!」
切島の叫び声が響いた。
硬化した拳をヴィランの腹にめり込ませ、押さえつけている。
血だらけになりながら。
それでも笑っていた。
「ここは任せろ!!」
さらに。
雷が走った。
上鳴だった。
「早く行け!!」
電撃を纏ってヴィランたちを牽制する。
「先輩を助けるんだろ!?なら悩んでる暇ねぇじゃん!」
そして後方からも力強い声が響く。
「負傷者は俺が運ぼう!!」
飯田だ。
飯田は一直線に駆けてくると、出久が支えていた負傷者の前でしゃがみ込んで、背中へ担ぎ上げた。
「俺が合宿所まで責任を持って連れて行く!」
その言葉には迷いがない。
委員長として、仲間として。
自分がやるべきことを理解していた。
「だから君たちは行け!!」
切島は笑う。
「ユカリ先輩、絶対待ってるぞ!!」
上鳴も叫ぶ。
「俺らなら大丈夫だから!!」
爆豪の拳が震えた。
轟の瞳が揺れる。
出久も息を呑む。
仲間の言葉に。
三人の迷いが消えた。
そして次の瞬間。
三人は同時に地面を蹴った。
爆豪は爆破で。
轟は氷を足場に。
出久は全力で。
森の奥へ。
ユカリの元へ。
風が吹き抜ける。
木々が揺れる。
誰よりも速く。
誰よりも必死に。
ただ一人を助けるために。