第26章 林間合宿
「……3年」
相澤がインカムを押す。
声が低くなる。
周囲の教師たちも思わず振り返るほどに。
「全員聞こえてるなら返事しろ」
『通形です!』
即答。
少し息が上がっている。
戦闘中なのだろう。
『波動です〜!』
こちらもすぐ。
『天喰です』
環も返答する。
だが。
沈黙。
相澤の目が険しくなる。
「ユカリ」
呼ぶ。
返事はない。
ノイズだけ。
「ユカリ」
もう一度。
返事はない。
ミリオの声が入る。
『え?ユカリ?聞こえてる?』
ねじれも呼ぶ。
『ユカリ??』
環も。
『ユカリ』
短い声。
だが返事はない。
相澤の思考が一気に繋がる。
違和感。
戦力分散。
陽動。
複数箇所同時襲撃。
強敵配置。
教師の誘導。
全部。
全部。
全部。
「狙いはユカリだ」
その言葉に。
インカムの向こうが静まり返る。
『なっ……』
ミリオの声。
『え!?』
ねじれが驚く。
環は数秒黙った。
そして。
『場所は』
震えるほど低い声だった。
相澤は即座に端末を確認する。
最後の通信位置。
移動経路。
報告内容。
全部を見る。
そして。
最悪の答えに辿り着く。
「西側森林区域」
「単独行動中だ」
沈黙。
次の瞬間。
環が走り出した音がインカム越しに聞こえた。
『環!』
ミリオが呼ぶ。
「どけ」
声が違った。
普段の環じゃない。
静かな環じゃない。
「どけ」
それだけだった。
相澤も動き出す。
「全員西側へ向かえ!!」
教師たちへ指示を飛ばす。
「ヴィラン連合の本命はそこだ!!」
その瞬間。
遠く離れた森の奥。
ユカリがいる場所では。
すでに。
ヴィラン連合による包囲が完成しつつあった。