第26章 林間合宿
期待していない?
ならなぜ――
死柄木が続ける。
「だから連れていく」
静かな声。
「本人がその気にならなくても」
「アジトに」
空気が張り詰める。
トガの笑みが深くなる。
コンプレスも帽子のつばを上げた。
ああ、なるほど。
最初から説得が目的ではなかった。
死柄木はユカリを見つめる。
「お前は理解しようとする」
「敵でも」
「ヴィランでも」
「誰でも」
その目が少しだけ歪む。
「だったら見ろよ」
「俺たちを」
「俺たちが何を見て」
「何を壊したくなったのか」
「何に絶望したのか」
ユカリは静かに答える。
「……だからって人を傷付けていい理由にはならない」
「そうだな」
死柄木はあっさり認めた。
「でも俺たちはやめない」
首を掻く。
「ヒーローもやめない」
「だからぶつかる」
その言葉は妙に真っ直ぐだった。
ユカリは理解する。
この男は。
少なくとも今は嘘をついていない。
本気でそう思っている。
本気で世界を壊したいと思っている。
だから危険なのだ。
「私は行かない」
ユカリが言う。
「そうか」
死柄木が答える。
そして。
その瞬間。
空気が変わった。
交渉の時間が終わった。
そんな空気だった。
死柄木がゆっくり手を上げる。
「じゃあ」
後ろのヴィランたちが動く。
トガが身を沈める。
コンプレスが指先を鳴らす。
荼毘の手に青い炎が灯る。
ユカリも構えた。
視線は一瞬だけ森の奥へ向く。
環。
ミリオ。
ねじれ。
そして一年生たち。
まだ来ない。
来られないようにされている。
なら、ここは自分で持ちこたえるしかない。
死柄木はそんなユカリを見て、かすかに笑った。
「やっぱりそういう顔するよな」
その言葉と同時に。
ヴィラン連合が動き出した。