第26章 林間合宿
荼毘が腕を組む。
「一人のガキのために随分大掛かりだな」
死柄木は少し考える。
そして珍しく言葉を選んだ。
「壊すだけなら簡単だ」
首を掻く。
「でも、それじゃ意味がない」
部屋の空気が少し変わる。
コンプレスが興味深そうに笑う。
「ほう?」
死柄木は窓の外を見た。
真っ暗な山。
その向こうには雄英がある。
「ユカリは中心だ」
静かな声だった。
「人を集める」
「人を動かす」
「人に夢を見せる」
誰も口を挟まない。
祭りの日。
迷子の子供。
周囲の生徒たち。
全部見ていた。
死柄木なりに。
「ああいう奴が一番気に入らない」
吐き捨てる。
「誰かを救うことで周りまで変える」
「勝手に希望を作る」
首を掻く音だけが響く。
「だから壊したい」
そこまではいつもの死柄木だった。
だが。
次の言葉は少し違った。
「でも」
全員が顔を上げる。
死柄木は続けた。
「もし向こう側じゃなくなったら?」
沈黙。
荼毘の目が細くなる。
トガも笑みを消した。
死柄木はユカリの資料を机に置く。
3年A組ヒーロー科、ユカリ。
それは。
他人を理解しようとする人間。
敵にも手を伸ばそうとする人間。
だからこそ。
死柄木は興味を持った。
「連れてくる」
低い声。
「選ばせる」
コンプレスが帽子のつばを上げる。
「拒否されたら?」
死柄木は即答した。
「その時は壊す」
冷たい答えだった。
だが迷いはなかった。
トガがくすりと笑う。
「私、ユカリちゃんと早く遊びたいなぁ」
荼毘は鼻で笑う。
「好きにしろ」
黒霧は静かに確認する。
「では作戦は予定通り」
死柄木が頷く。
「今夜だ」
外では風が吹いていた。
山の木々が揺れる。
遠くでは林間合宿の灯りが小さく見える。
その光を見ながら死柄木は思う。
ヒーローは必ず守ろうとする。
だから利用できる。
強い敵が現れれば。
強いヒーローが向かう。
その瞬間。
本当に狙うべき場所は無防備になる。
それが。
今夜の作戦だった。