第26章 林間合宿
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林間合宿初日。
山の空気は澄んでいた。
木々は深く生い茂り、都会では聞こえない鳥の声が響く。
雄英高校の生徒たちは、教師たちの指示のもと、予定された訓練をこなしていた。
体力強化。
個性訓練。
実戦想定演習。
すべて予定通り。
教師陣の警戒も徹底されている。
プロヒーローも配置されている。
普通に考えれば、何も起きない。
むしろ起きる方がおかしい。
それなのに。
ユカリはずっと胸の奥が落ち着かなかった。
昼休憩。
訓練場を見渡す。
爆豪が何かに怒鳴っている。
出久がノートに書き込んでいる。
轟は静かに水を飲んでいる。
いつもの光景。
それなのに。
「…………」
「ユカリ?どうかした?」
同じA組を警護中のミリオが不思議そうにする。
「……わからない」
ユカリは正直に答えた。
本当にわからない。
何が。
どこが。
そう聞かれても説明できない。
ただ。
違和感だけがある。
ミリオが少し考えてから言う。
「危険察知みたいなもの?」
ユカリは首を振る。
「ううん。もっと曖昧……」
「じゃあ勘?」
「……かもしれない」
ミリオは笑った。
「ユカリの勘、結構当たるから怖いんだよね」
だが、ユカリは笑えなかった。
なぜなら。
今回の違和感は、敵意や殺気とは少し違うからだ。
ヴィランがいる。
誰かが襲ってくる。
そういうわかりやすいものではない。
もっと静かなもの。
もっと嫌なもの。
例えば。
誰かがこちらを見ている。
そんな感覚。
けれど振り返っても誰もいない。
例えば。
何かを待っている。
そんな感覚。
けれど何を待っているのかわからない。
ずっとそんな状態だった。