第25章 夏祭りボランティア
戦っていた時の強さでもなく。
誰かを救っていた時の凛々しさでもなく。
ただ、そこに立っているだけで。
「……ユカリ先輩」
轟が、ぽつりと言った。
ユカリが振り向く。
「?」
轟はまっすぐに空を見たまま続ける。
「綺麗です」
それだけ。
余計な説明も、言い訳もない。
ただ感じたままを、そのまま言葉にしただけだった。
ユカリの目が大きく開く。
「え……!?」
顔が一気に赤くなる。
「と、轟くん!?今の……」
動揺している間に。
ドンッ!
また花火が上がる。
その光に照らされながら。
少し離れた場所で。
爆豪が舌打ちした。
「……チッ」
りんご飴の棒を噛みながら空を見上げる。
「綺麗だァ?んなもん」
一瞬だけ間を置く。
そして。
花火を見たまま続けた。
「毎日だろうが」
言葉は荒い。
いつも通りの口調。
だが。
視線は一度も逸れていない。
さっきの轟の言葉にも。
ユカリの反応にも。
全部ひっくるめて逃がさず見ていた。
それだけで十分だった。
ユカリは、花火と二人の言葉の間で真っ赤になったまま、どう反応していいかわからず固まっている。
ねじれが隣でニコニコしていた。
「ねえ通形」
「なに?」
「もう三人で付き合っちゃえばいいのにね!」
「なるほど……ナイスアイディアだねそれ!!」
「……それだけはおすすめしない」
環はため息をつきながらも、今年のボランティアを無事終えれたことに少しだけ口元を緩めた。
夜空には花火が続く。
誰もが見上げるその光の中で。
それぞれの想いだけが、静かに浮かんでいた。