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【ヒロアカ】MY SWEET HEROES

第25章 夏祭りボランティア




林の中に響いていたのは、

爆発音でも、

個性の暴走音でもなく、

幼い子供の泣き声だった。

「お母さん……」

震える声。

「お母さん……」

何度も。

何度も。

誰にも届かないと思いながら呼び続けていた声。

ユカリはその声を聞いていた。

大丈夫。

助けに来た。

もう安心して。

周りのみんなはそう言っていた。

それでも。

男の子は安心できなかった。

きっと怖かったのだ。

暗い林の中で。

知らない場所で。

一人で。

どれくらい泣いたのだろう。

どれくらい不安だったのだろう。

ユカリはゆっくりと一歩踏み出した。

「ユカリ先輩!」

出久が声を上げる。

だが、ユカリは止まらない。

また一歩。

また一歩。

「おい!」

爆豪が叫ぶ。

「近づくな!」

轟も声を上げた。

「危険です!」

しかし。

ユカリは振り返らない。

男の子だけを見ていた。

すると。

男の子が気付く。

涙で濡れた目がユカリを捉えた。

「ひっ……!」

恐怖が走る。

次の瞬間。

バチィィィッ!!

暴走した稲妻が一直線に走った。

「先輩!!」

出久の叫び。

轟が動く。

爆豪も反射的に踏み込む。

だが間に合わない。

稲妻はユカリの腕を掠めた。

赤い線。

血が流れる。

焼けるような痛み。

それでもユカリは止まらなかった。

避けもしなかった。

男の子の瞳が大きく見開かれる。

驚き。

混乱。

なぜ避けないのか。

なぜ怒らないのか。

なぜまだ近づいてくるのか。

ユカリは歩き続ける。

そして。

男の子がこれ以上怖がらないそのぎりぎりの距離で、そっとしゃがんだ。

目線を合わせる。

同じ高さになる。

誰も声を出さない。

風の音だけが聞こえた。

ユカリは静かに言った。


「こわかったね」


男の子の肩が震える。


「…………」

「くるしかったね」


ぽろり。

涙が落ちる。


「つらかったね」


男の子の唇が震える。

ユカリは責めない。

叱らない。

諭さない。

ただ。

男の子が抱えていた気持ちを。

代わりに言葉にしていく。


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