第1章 序章
「あ!零」
一兄は急に声を上げて、私は体をビクッと震わせた。
「揶揄ってくる男子がいるってことは、つまり……」
「?」
私は意味深な言葉にさらに困惑していると、一兄はニタァッとした笑顔で楼兄に目を向ける。
「楼。おまえにも経験あるんじゃないか?」
「……何の話だ?」
「いや。これは男子全員が通る通過儀礼と言うか?皆、やっちゃう事なんだよな〜」
(だからさっきから何の話?)
ボーイズトークを前に、私は居心地が悪くて頬を膨らませる。
そうやって目の前で一兄が楼兄ちゃんと内緒話をしているのを見るのは、あまり好きじゃない。
「女の子には分からない」なんて言われているようで。
親戚にたらい回しにされた時に比べれば、どうってことのないはずなのに。
一兄も兄ちゃんも、絶対そんなことしない人だとは分かっているはずなのに。
私が勝手に思い込んじゃうだけで、自分って面倒臭いなって思っちゃう…
「んじゃ。兄貴の代わりに俺が教えよう。零。覚えておけよ。周りの意地悪そうな男子が何を言おうと、それは時には、悪意ではないんだ」
「?」
教えてもらったのに、またさらに分からなくなってしまい、きょとんとしてしまう。
一兄は分かりやすく言い直す。
「お前のことが好きかもしれないってことだ」
「………え?」
それ以上に分からなくなってしまう。
でも芽生える感情は正直で、頬辺りが熱くなる感覚はあった。
恋愛観念はまだまだお子ちゃまな私には、早い話なのかもしれない。
「え?普通、嫌がらせとか意地悪なことって、嫌いな人にやるものじゃないの?」
「いやいや。逆なのよ零ちゃん」
一兄は途中で自動販売機で缶コーラを買い、飲みながら喉を潤して、話を続ける。
「だって普通、本当に嫌いな奴とか関わりたくない奴に、自分から関わることはないだろう」
た、確かに……