第1章 序章
頼もしい2人の兄に挟まれながら、私は夕焼け空を仰いだ。
小学校卒業という特別な節目のせいか、今までのことを思い返す。
大人達の都合や理不尽なことにも振り回された。
私を見てくれる人が常にいることを実感していないと、本当の一人ぼっちになりそうな気がした。
特に夜になると怖かった。
そんな時にいつも、兄の手や背中に縋ってしまい、頭をポンポン撫でてくれた。
「大丈夫大丈夫」
兄は何度も言って私を落ち着かせた。
兄は口数が少なく、自分の感情を表に出さないタイプだから、それが兄の精一杯の慰め方だったと思う。
物心ついた頃から一緒にいたから、お互いのことを誰よりも知っている。
兄であり、親でもある。
(でも、流石にもう中学生になるんだ。これからは、1人で頑張っていかないとな…)
意識を夕焼け空から隣の兄の方へと変える。
昔のように、1人で泣くことも減った。
施設の皆は、本当に良い人達で、おかげで私はこうして前を向いていられる。
泣き虫だった私はずっと無意識の内に、親代わりのお役目を兄に押し付けていた。
兄ちゃんだってきっと、今いる中学やこれから入る高校で、友達作ったり、楽しいことだっていっぱいやりたいはずだ。
私だってきっと、中学でちゃんとした友達ができるだろうし、お互いがお互い、新しい世界を広めていくんだ。
兄ちゃん達が通っていた中学なら、なおさら心配はいらない。
それに、家族でいることは変わらない。
たとえお互いがどんな事情を抱えようと、家族でも話せない秘密や隠し事があっても、話し合えばきっと分かり合える。
一兄を見習って、対話はもちろんお互いの気持ちを大切にし合えば、きっと大丈夫。
だって私たちは、兄弟だから。
大丈夫。大丈夫。
そんな風に私は、これから起こるだろう新生活の予感を胸に、中学校入学を控えていた。
この時、楼兄と一兄は、すでに上がる高校を決めていたらしい。
名前は『風鈴高校』と言って、この地域ではいろんな意味で有名な高校だと。
名前を聞いた時は「ふ〜ん。涼しそうな名前だね」としか思ってなくて、そこまで気にしていなかった。
まさか、“あんな人”に出会うなんて、微塵も思っていなかった。