第1章 序章
(あ。そうか…)
1週間ほど前の夜に遡る。
『零〜!今度、零の好物を皆で食べたいんだが。何が好きなんだ?』
施設のリビングでのんびりしていたら、一兄がソファの後ろから身を乗り出して聞いてきた。
その時ちょうどテレビでご当地コロッケが紹介されており、口が自然と動いた。
『コロッケ』
なので今夜は、卒業祝いを兼ねたコロッケパーティーなのだ。
(だから一兄聞いてくれたんだ……)
自然と頬が緩む。
「零〜。卒業おめでとう!いや〜。もう零も中学生か。また背も伸びたんじゃないか?」
一兄は手のひらを自分の頭の上に掲げて、私の成長を祝ってくれる。
いつものようなさんさんとした太陽のような明るさで、私達を照らすようにして話しかけてくれた。
いつもクールでどこかスカしている楼兄とは違って、いつも笑顔で、誰よりも対話を大切にする。
私たち兄弟2人だけだと、口数が少なくてしんみりとしちゃうけど、一兄が入るだけで空気が明るく変わる。
今思えば、私は、そんな一兄のことが……
「……確かに背の順で背後取られることはなかったし。男子には「デカ女」なんてよく揶揄われるよ」
「何ィ?そんなこと言われたのか?!うちのアイドルを貶すなんて、許せん奴だ」
さらにオーバーを上乗せしたようなオーバーリアクションで、本当に楼兄とは全くの対照的な人だ。
この人たちを足して2で割った方が、私にはちょうど良いかもしれない。
私は微妙な笑みを零して、適当に流す。
「いいんだよ。もう慣れたし、それに…」
「一兄が入ったら、さらにややこしくなりそう」なんて言ったら、またさらにややこしくなりそうだったから、黙っていることにした。