第3章 〈過去編〉奇妙な先輩
(え?)
振り返ると、楼が立っていた。
恐らく騒ぎを聞きつけて、来てくれたのだろう。
「どうしてここにいる?」と言わんばかりの苦い顔をこちらに向けてくる。
「兄さん……」
棪堂は零の視線に釣られて、楼の方を一瞥する。
「……あまり似てねえな。お前と」
「よく言われます」
「お前の方が身長高いんだな」
「それもよく言われます」
もうどんな問いを投げかけられても、どんな状況になっても、もう怖くないような謎の自信がついてしまった。
弁当ひっくり返されて、知らない間に乱闘になったり。
自分が蒔いた種なのに、2つ上の先輩に尻拭いさせたり。
その先輩はどうやら、風鈴でもかなり有名の1年生らしいし。
(と言う私も、今回の件で、かなり目立ってしまっただろうな……)
しかもこの人の女だと勘違いされたまま……
零は真隣にいる棪堂を見上げる。
「何でお前がここにいる?」
早速お叱りタイムだ。
零は前に出て、弁明する。
「ごめんなさい。届け物をしに__」
スッ
「!」
しかし楼は妹の零を通り過ぎて、棪堂の方へ睨みを効かせた。
(えッ?何で……)
「おいおい。俺はここの生徒だぜ。言う相手を間違えてんじゃねぇか?」
そればかりは至極真っ当な正論だと零は思った。
約束破って勝手に来た挙句に問題起こした自分が然るべき処罰を受けるべきなのに。
助けてくれた相手を責めるなんて、筋違い過ぎる。
「どうしてお前がコイツと一緒にいる?」
「ちょっ、兄さん。違うの…!」
零は後ろから楼の片腕を掴むようにして言う。
いじめてきた奴らはすでに去っていって、逆に守ってもらったことをちゃんと説明しなくては。
「私が勝手にここに来たのが悪いの。上級生に絡まれてたところを、助けてもらって__」
「何…?コイツが……?」
楼は再び棪堂を見上げる。
「……お前が善意で人を助けるとは到底思えない。何を企んでやがる?」
「ちょっと兄さん…!いくら同期でも、さっきから失礼じゃ」
「そーだぞー。礼儀や実力に関しちゃ、お前は妹とは比べるまでもねえな」
「?」
実力……?