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愚者の舞《WIND BREAKER》

第3章 〈過去編〉奇妙な先輩



「何だお前?中坊1人がこんなとこで何ウロチョロしてる?」

4人の内の1人がガンを飛ばしてこちらに迫ってくる。

(え?中坊って……ああ、そうか)

私は自分の足元を見る。

今朝は制服のスカートじゃなくて、1限の体育にすぐ参加できるよう、ジャージのズボンを履いていたんだ。

中2男子と変わらない背の高さ。
男顔。
合気道や演劇で鍛えてきた体格。

そりゃどう見ても男子と間違える。


私は否定することもなく、気の弱い中学生を演じた。

「す、すみません…!し、知り合いの、忘れ物を渡しに来た、だけで。すみません。出直します……」

体を縮こませるようにして、スクールバッグをグッと抱え、顔を引き攣らせる。

これでも1年以上、あらゆる役柄を務めてきたから、どんなキャラも演じてみる。

プライドなんてものは無い。

大事なのは、穏便に済ませること。

向こうだって無害の人間に下手に喧嘩ふっかけるほど馬鹿じゃ……


「はァ?あの天下の風鈴様の校門前で、うろちょろしやがって。目障りなんだよ」

その声を合図に、上級生4人は私を取り囲むようにしてさらに迫ってくる。

あ、これは馬鹿だ。

「ん?何だ何だ?」
「カチコミか?どこの組織だ」
「ただのジャージ小僧じゃねぇか?」
「見ねえ顔だな」

遅刻が当たり前の風鈴生達が、異変に気付いて集まってくる。

校門前はもはや喧嘩特有の空気が広がっていた。

私からしたら、飛んだ茶番劇を繰り広げる舞台になりそうだ。


「だったら謝罪は、誠心誠意にしなくちゃよなぁ。待ってるもん出しな」

上級生が私に手を出してくる。

ああ、いわゆるこれはカツアゲか。

流石にこんな柄の悪いキャラは演じたこともないし、部活でもいない。

(でもお金で解決するなら……)

私は肩に下げているスクールバッグから財布を取り出そうと、目線を外した。

その瞬間、

バッ!

「!」

もう片方の手に下げていた保冷バッグを奪われた。

(あ…!!)

騙し討ちのような一瞬で、取り返そうと前に出たが、他の仲間が阻んで邪魔した。

「それは…!」

「あ?何だ。手作り弁当なんて。女々しいし気持ち悪ぃ」

そう言って吐いた上級生は、投げ回すようにして捨てた。


あ。弁当……
兄ちゃんの……

この時、私の中の何かが切れた。

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