第2章 〈過去編〉奇妙な演者
それから急ぎ足で施設に戻り、何事もないように1人で夕食を食べて、風呂を済ませ、寝る直前までの用事を済ませた。
翌朝は弁当を作るために早めに寝る必要があるから、急いで書かなきゃ。
と思いつつも、私は机の上で紙とシャーペンを持て余していた。
(……なぁーにから書けばいいんだろう)
指先でクルクル回していると、段々と動きが良くなっていく。
このままだと、書き方よりもペンの回し方の方が上達してしまいそうだ。
そもそも、誰かに気持ちを伝えるのに、手紙なんて古典的なやり方を選んだことがない。
普通に親のいる家庭なら、イベントやら親子行事とかで、書くこともあるだろうけど……
(……ハァ。しょうがない。とにかく書くか)
私はヤケクソ気味に筆を走らせて、思ったことをありのまま表現する。
やったこともないことで、何が良くて何が悪いかなんて分かりっこない。
だったらいっそ、ありのままぶち撒ける。
演技するように着飾る必要もない。自我丸出しでやってやる。
今までの不満も本音も全部書いて、どんな結果になろうと、ありのまま受け入れるだけだ。
(ハッ…黒歴史上等)
この時の私は、ちょっとだけワクワクもしていたと思う。
新しいことをやるのは、不安以上に心躍る。
でも同時に、この時は全く持って予想しなかった。
翌朝の風鈴高校前の校門にて。
ひっくり返された弁当箱入りの保冷バッグ。
人相の悪そうな風鈴高校3年生の上級生達。
その内の2人がのびており、立ちすくむ私。
そんな私の肩を抱くようにして、間に入ってきた別の風鈴生。
(え…1年生…?)
制服の袖に描かれた一本のラインを見て分かった。
一兄や兄ちゃんと同じ学年。
その割には恵まれた体格をしていて、目の前で対峙している3年生にも引けを取らないくらいの風格を間近で見た。
でも……
(え、誰……)
状況が分からず呆然としていると、“その人”は私の知り合いを演じて、上級生から庇ってくれた。
「おいおい。女1人相手に男4人って、ハードプレイにも程があるだろ」
その悪そうな笑い声や笑みを横から見て、私は思った。
弱い者を助ける正義のヒーローとは程遠い。
まるで、何か悪巧みを考えている子供のように見えた。