第2章 〈過去編〉奇妙な演者
「お兄さん、高校の購買部とかでいつも済ませているなら、たまには手作り弁当作ってあげるのは良いと思うよ!」
思い切って相談はしてみるものだ。
私には全く思い付かないアイデアで、でも名案だと思った。
口数が少なく兄に対して、会話が難しいなら、行動で示せば良い。
それも美味しい料理は、時には人の心も動かすとも言うし。
(まあぶっちゃけ料理は嫌いじゃないし。施設の皆んなとピクニック行く時は、サンドイッチやらおにぎりを作ったこともあるし)
料理はことは姉の方が断然美味いけど、兄の好みはそれなりに熟知している。
聖良がアドバイスを焚べたおかげで、零の意欲はメラメラ燃えていく。
そこでさらに一味加える。
「あ、それと手紙とかも書いてみたら?」
「手紙?」
それはまた独創的なアイデアだった。
「私も母の日とか父の日でもやったことあるんだ。身近な人ほど、案外、手紙を書いて思いを伝えてみると、不思議と今まで気付けなかった感謝の気持ちとか、かけがえのない時間を思い出すようになるというか__」
まさに焚べられた炎のように、段々と饒舌になっていく聖良の様子を見ながら、零は思い出した。
彼女は本の虫で、物書きも好きな性分で、読書感想文でも大賞を取ったことがあるくらいの文才だ。
そんな彼女からのアイデアだが、そこはちょっと気が引ける。
(百歩譲って弁当ならまだしも、手紙かぁ……)
正直、これまで兄に向けて書いたことは一度もない。
やったこともないことは、簡単にするもんじゃないと思うけ__
『誰かの助言や教えで、今まで見たことない世界に踏み込んでみたり、そう繰り返して、本当の自分の好きなことに気付いていくんだよ』
「……」
聖良と初めて会った時に言われた言葉が今になって思い出す。
今まさに私は、知らない世界へ踏み込んでいる時なんだな…
「……」
「ま、まあお兄さんの年齢だと、恥ずかしがって嫌がるかもしれないけど、でもきっと零の気持ちは届くよ。家族だし」
……確かに、聖良の助言は、いつも正しい。
なら、迷う必要はない。
「……そうだね。考えてみるよ」
こうして私は帰り道を変えて、スーパーに立ち寄ることにした。
ついでに近くの文房具店にも。