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愚者の舞《WIND BREAKER》

第2章 〈過去編〉奇妙な演者



その日を堺に、兄と会話する機会がめっきり減った。

門限ギリギリの22時に帰ってくるようになって、決まってどこからしら怪我をしていた。

何度も怪我の理由を聞いても、「転んだ」と見え見えの嘘ばかりをついてくる。

「私に何かできることはない?」と聞いても、「大丈夫」「ありがとう」の一言くらいしか返してくれない。

同じ施設に住んでいるはずなのに、廊下で鉢合わせすらできず、何気ない会話すらできない。

普通の兄弟はそんなものなのかな?

それとも、両親がいないから、普通じゃないのかな?

それとも……


「零はさ。今、辛くない?」

「!」

意表を突かれたような感覚で、私は思わずハッとなる。

放課後の帰り道途中、隣の聖良が背が高めの私の顔を覗き込むようにして聞いてきた。

「なんか零。やっぱり最近元気がないというか?それが演技に出ている気がしてね」

「……やっぱり、そう思う?」

零は苦笑いを浮かべた。


親友には分かっちゃうのか。

もしかしたら、今の私のことを一番分かっているは聖良かもしれない。

昔は兄ちゃんだったのに……


零はそんな憂鬱な気持ちを抱きつつ、対照的な感情も抱いていた。

男役を演じることへの愉悦。満足感。

兄達と対等になれるような思い込み。

男である兄や一兄が、成長するにつれて、どんどん遠い存在になっていく。

どこか寂しさもある。

男女間の見えない壁は、思春期を経て段々と厚くなっていく。

それは逃れようのない成長の過程。それは分かっている。

でも、やるせない気持ちは和らぐどころが、日に日に増していく。

そんな気持ちを、もし1人でも理解してくれるのなら、どれだけ……


「あまり気乗りしないなら、今からでも断っていいんだよ?」

「え?」

「男役。もし言いづらいなら、私から顧問に言っておくし」

「あ、ああ。そっちか……」

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