第2章 〈過去編〉奇妙な演者
「副部長!お疲れー!」
「あ。副部長だ」
「!」
物思いに耽っていると、同じクラスメイトの女子2人に声をかけられる。
(えっと、誰だっけ?)
正直私は人の顔を覚えるのも苦手である。演劇者としては致命的かもしれないが……
多分、体育の合同授業でグループになったことがある女子達だ。
悟られないよう適当に「お疲れー。久しぶりだね」と返した。
「聞いたよー!男役をやるんだってね!演劇部で」
「よっ!さすが2年のエース!期待の星⭐︎」
焚き付けるようなエールで、少し反応に困る。
ちなみに、「零」と私を名前で呼ぶのは、聖良を含めたよほど仲のよい友達で。
(実を言うと、聖良しかいないと思う。だって友達少ないから…)
後輩はシンプルに「つつじ先輩」
そして、その他の7,8割からは、何故か「副部長」呼びなのだ。
名乗った覚えはないのに、誰が広めたんだろう…?
「零!お待たせ!」
校門付近で聖良が後方から追いかけてきた。
「あ!今度は部長だー」
「久しぶりー部長」
「うん。久しぶりー」
近所のご挨拶みたいな微笑ましい雰囲気が広がり、少し近寄りがたくなる。
やはり私は聖良みたいな、誰かとフレンドリーになるのには向いていないらしい。
演技しろと言われても、そこまで偽れる自信はない。
そして校門前で別れて、私は聖良と帰路につく。
校内の中でも、私が施設育ちだと知っている人は、私が知る限りでは聖良だけだ。
(もしかしたら噂が流れて、とっくに知られているかもしれないが……)
だから基本、施設までの帰り道を共にするのは聖良で、彼女もそんな私の事情を理解してくれている。
私が演劇部にいるのも、皆の輪に入れているのも、全部……
「そういえば、副部長呼び気に入った?」
「?」
「親しみあっていいじゃん!これでも学年全体に広めるのに苦労したんだよ」
いや犯人アンタだったんかい。