第2章 〈過去編〉奇妙な演者
(……兄ちゃんと一兄が、風鈴高校に入学してから、2人は変わってしまった)
いや、その前から、少しずつ変わっていったのは、薄々気付いていた……
私が同じ中学に入学する頃から、2人は一緒になることが増えた。
放課後一緒に帰ろうと誘ったけど、兄ちゃんは「友達と帰ったほうがいいだろ」と素っ気なく返した。
一兄とも会って話す機会が減った。
『男には男同士でしか話せない内緒話があってな。いつも誘ってくれるのにごめんな』
一兄の困り顔を見て以来、私は自分から誘うのをやめた。
確かに周りには、一兄の友達と思わしき3年生達がいつもいて、1年の私が入り込める余地はない空間が漂っていた。
(この人達、が、一兄の友達……?)
皆、一見優しそうではあったが、その奥底の芯からは、並々ならぬ強さみたいなものを感じ取った。
そしてその中心にいつもいるのは、一兄だった。
太陽のような存在には、その光に惹かれて人が集まってくる。
まさに太陽系のようで、強い光には星々が集まり、一つや大きな世界が広がる。
今の風鈴園があるのはきっと、そんな一兄の温かい人柄あってこそで、私は改めて思い知らされた。
もう一兄は、私が気軽に話しかけていい人じゃ……
『う、ううん。気にしないで。こちらこそごめん……そうだね。そろそろ私も兄離れしないとね。なんて』
聖良みたいな良い友達もできて、熱中できることも見つけた。
一見したら順風満帆。
それに施設でも会えるから、同じ校内でも軽く顔合わせできるだけでも贅沢な話だ。
私ももう少し大人にならないと。強くなるって決めたから。
でも一兄は、私にいつもと同じ笑顔を向けてくれて、必ず言葉を交わしてくれた。
『ちなみに今夜はことはがグリーンカレー作るって言ってたぞ!俺もそれ楽しみにしてるからさ。また後でなッ!』
夜ご飯の時も、なるべく顔を合わせてくれる。
週に1,2回は、用事とかで帰りが遅くなったりするけど、それでも帰ってきたら、施設の皆1人1人に必ず「おやすみ」の挨拶もしてくれる。
『零〜。帰りが遅くてごめんな』
『ううん。大丈夫。おかえりなさい。それより……』
そうだな。一兄は変わらない。
変わったのは周りの環境であって、その根本の優しさは健在だ。
問題なのは、本当の兄ちゃんの方だ……