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愚者の舞《WIND BREAKER》

第1章 序章



子供2人とも引き取るといった器量のある人は、うちの親戚にいなかった。

別々に育てる方向で話が進んだ。


ヒソヒソ

「うちの子はこれからお受験だから、引き取る場所も余裕もないわ。二人なんて尚更……」

ヒソヒソヒソ

「俺だって、母さんの介護もあるから、子供見る余裕なんてないぞ。寝たきりならまだしも、動き回る子供なんて……」

ヒソヒソヒソヒソ

「やっぱり2人はやめた方がいいわ。お金は問題なくてもねぇ。何ならあっちを戻して……」

ヒソヒソヒソヒソヒソ

「バカッ!それじゃあ俺達が見捨てるみたいじゃないか。亡くなったあの子達の両親が報われないじゃないか」

ヒソヒソヒソヒソヒソヒソ


(ああ…うるさい……)


私はパイプ椅子に座ったまま、ギュッと握り拳を両脚の上で作る。

大人達からの憐れみの視線や明らかに歓迎されていない空気の中
煩わしさで息が詰まりそうだ。

少なくとも、よくない話をしているのは分かった。

子供だったからこそ、そんな大人特有の嫌な雰囲気に敏感だったのかもしれない。

俯いて、自分の足元を眺める。

ひらひらと足を交互動かして、大人達の空気から目を背ける。


私たち兄弟は、除け者扱い。

悪いことをした覚えはないのに、何で嫌な目で見られなきゃいけないの?

どうして神様は私達から両親を取り上げたの?

それとも、生前の両親が悪いことをしたの?


いや、それよりも、ここから抜け出したい…


知らない人に囲まれるのは、もう疲れた。

しばらく、静かなところで休みたいな。

どこでもいい。誰もいない場所がいい。

こんな場所で、私に味方する人なんて……


「零」

「!!」


見上げると、兄がまっすぐな目で私を見ていた。

あ、いた。

唯一、私に味方をしてくれる人。


ぽかーんとしていると、兄の黒い瞳が、私の金色の瞳をはっきりと捉え、私に問いかけた。


「俺と別々に暮らすか、それとも、一緒にここから抜け出すか…?」

「……」


私は静かなところが好き。私のことを誰も知らない場所に行きたい。

でももし、1人だけ、一緒にいてくれるなら……


「……兄ちゃッと…一緒に…いたい」


溢れる涙と声を抑えながら、答えていた。

兄はこっくり頷いて、嫌な大人達の空気に立ち向かった。


「俺達、施設に行きます」


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