第1章 序章
私の名前はつつじ 零。
どこにでもいる普通の女の子で、2つ上の兄と優しい両親の元で、何不自由ない家庭で育ってきた。
と、友達に言えたら良いなと思ったことはある。
多分私は、世間から見たら、普通ではない。
4歳の頃、両親が交通事故に遭い、亡くなった。
その時、私と2つ上の兄は母方の祖母に預けられていた。
突然の連絡に、祖母はショックで寝込んでしまい、1ヶ月足らずで持病がさらに悪化して、亡くなった。
私と兄は、二人ぼっちになった。
「ほんとうに、つらかったねぇ」
葬儀の時、父方の親戚のおばさんが私達兄弟に話しかけてきた。
黒い喪服に身を包み、辺り一面の人たちが真っ暗に見えていたのを、はっきり覚えている。
小さい私は兄の小さな手に引かれながら、その暗さに混ざるようにして、かつて両親だったものを目の前にした。
白い箱2つを前にしても、幼かった私は、まだ“死”という概念をよく理解できていなかった。
失う悲しみというのを、まだよく分かっていなかった。
きっとその分、兄が全て背負っていたんだ。
おばさんは膝を曲げて屈むようにして、今度は兄に言う
「楼君も、すっかりお兄ちゃんね。零ちゃんのことしっかりみていて、偉いわ」
私はずっと兄の手に引かれていたのを意識する。
兄が握る手の力が僅かに強まった。
「……俺達、一緒に住むことはできないの?」
兄がそう言うと、おばさんは困ったような表情を見せる。
「それは今、皆で話しているところでね。あなた達はまだ幼いからね。難しい手続きとかルールがあるけど、それは大人達がやるから大丈夫よ」
小さい私でも分かった。
まるで嘘くさい笑顔だった。
これは後で知った話だけど、親は私に相当なお金を遺していたらしい。
さらに莫大な保険金が入り、皮肉にも、成人するまでの生活に支障をきたさないくらいのお金が振り込まれた。
大学までも難なく行けるくらいの額だった。
そこで親戚達は私達兄弟を上手く懐柔して、中学になるまでの最低限の養育費以外を全て自分たちのものにして、親戚一同仲良く分配しようという腹だったらしい。
しかし問題なのが、まだ6歳と4歳の子供二人を、同時に引き取ることはできないという点だった。