• テキストサイズ

愚者の舞《WIND BREAKER》

第2章 〈過去編〉奇妙な演者



「!」

シィーン

いつの間にか体育館内の空気が変わっていることに気付いた。

皆んな皆、今話している部長さんに注目して、もう誰も笑ったり、微妙な空気を感じている様子もない。

校長先生の長ったらしい話の時よりも、よほど集中している。

私はその変化を不思議に思いながら見渡していると、ある事を思い浮かべた。

(え、“さっきの茶番”って、もしかして……)


部長さんはニヤッと笑い、手元から何かを取り出す仕草をした。

「?」

しかしその手には何か握られている様子もなく、宙に飛ばすようにして、大胆に手を挙げる。

するとその手から弧を描くように照明が入る。

「!」

『Thank you for coming♪』

舞台の赤い暖簾の隅に、綺麗な文字の造形が浮かび上がる。

この体験入部会のためだけに用意されたのであれば、随分と手の込んだ演出だ。

(しかも私みたいに、まだ入部するかも分からないのに……)

観客の何人かがささやかな歓声と拍手を送る。

部長さんはそれらを手で受け取るような大袈裟な仕草をしてから、マイクを持ち直す。


「え〜まずは、僕たちについて知ってもらうには、観てもらう方が早いと思う!百聞は何とかって言うしな!」

「!」

あれ…!?

よく見るといつの間にか、隣に並んで立っていたはずの他の部員が、すでにいなくなっていた。

他の観客も、ようやく気付いたらしく、ボソボソと呟いている。

舞台上にいるのは、部長さんただ1人。他の人達は横脇の舞台裏に移動したのだろうけど……

(え?いつからいなくなって……)

あ。もしかして。

さっきの照明に気を取られている間に、皆んなの視線が舞台から外れている時に、物音立てずに退散したの?

でも、全ッ然。気付かなかった。

観客の注意を逸らしながら、魔法みたいにその場から消えるような演出なんて。

まるでマジックのようで……

私の心は、すでに新しい世界へと魅了されていた。

/ 44ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp