第2章 〈過去編〉奇妙な演者
「いいんじゃない?後輩の好意に甘えても」
「!」
再び聖良が、部長として横から口を添える。
腕を組んでから零に笑顔でアドバイスする。
「零は確かに努力家だけど、演劇はあくまでチームワーク。実際、先輩は後輩達を育てるものだから、こういう時もちゃんと見ないとね」
「……そうだね。じゃあお願いする」
零は道具から手を離し、可愛い後輩達に託す。
その後ろ姿を見ていたら、部長に肩を叩かれる。
「零。最近、何かあったの?」
「?」
「何か、零の演技、何というか……前と違うなって」
「!」
聖良とって、零は特別だった。
演者としての才能を誰よりも認めていて、共に演劇部を支える仲間として信頼もしていた。
実際、1年前、零を演劇部に誘ったのも、彼女だった。
入学して間もない新鮮な空気の中、同じ教室で。
『つつじさん!部活、決まってないなら、演劇とかどう?つつじさん可愛いし』
『え…?嘘だ』
『嘘じゃ無いって〜…!てか、待ってよ!』
皆が皆、気の合いそうな友達とグループを作る中、1人ずっと自分の席に座り留まったままでいる子がいた。
(何であの子、誰とも話そうとしないんだろう…?)
誰とも馴れ合うつもりもなく、窓側の方をぼーっと眺めている変わった子だった。
でも、その綺麗な容姿に心惹かれるものもあった。
幻想的な銀髪に、太陽のように明るい黄金色の瞳。
通り過ぎる皆が必ず一瞥するくらい、目立つ姿だった。
(最初は恥ずかしがって、話しかけづらいタイプなのかな…?だったら……)
そこで、率先して声をかけた。
すると話を聞いてみるに、どうやら、友達を作りたくないわけじゃないらしい。
『私…施設育ちだから……あまり良い印象じゃないし』
高い身長の割に縮こまるような物言いに、不釣り合いな気がしつつ、思わず言ってしまう。
『へぇ〜。小説の世界みたいだね』
すると零はキョトンとして、警戒心の膜が薄くなった。
聖良も零のそんな変化を肌で感じ、ニコッと笑い、その手を引いた。
『ねえ!演劇なら、なりたい自分になれるんじゃない?』