第2章 〈過去編〉奇妙な演者
「つつじ先輩!お疲れ様です〜」
後から後輩達が顧問に続いて彼女の周りへ集まってくる。
中には、観客席から見ていた部活外の人もいる。
「今日の演技もとってもすごかったです!本当の王子様みたいで…!」
「公演会って来月ですよね?!いや〜本番観るのがめちゃ楽しみです」
観客としての熱がまだ冷めきっていないのか、饒舌に感想を物申す。
零は「ありがとう」と謙るようにして一言だけ交わす。
熱が冷めきっていないのは、彼女もまた同じだった。
彼女の場合、演者としての熱だが。
「こらこら。役者は演技終わりも肝心なのよ」
するとそこに、零の同期の1人であり、この演劇部の部長でもある女子生徒が間に入る。
彼女の名は聖良。
リーダーを務めるだけあり、経験者ならではの空気とその自信故に出る姿勢の美しさを兼ね備えていた。
零とは違うタイプでの天才型だった。
「これから役者チームは復習を兼ねてミーティングもあるし、入り込んだお話はまた今度でいいかしら?」
まるで彼女の気持ちを腹話術のように代弁する。
「あ!そうでしたね!すみません」
「じゃ、じゃあ、お疲れ様でした」
ギャラリーが消えていき、最後の打ち合わせも終わらせると、演劇部全体で体育館の片付けに入っていく。
役者チームとは別の裏方チームが中心に、倉庫に道具をしまったり、次の公演会に向けての衣装や小物作りに励む。
しかし役者チームもまた共に活動する演劇部なため、片付けもせっせと進んでやる。
「あ、つつじ先輩!いいですよ!ここは私達がやるので」
裏方チームの後輩達が、大きい道具を持ち上げようとする零を止める。
「いや、副部長だからって、片付けは皆でやるものだよ。気にしないで」
しかし、気の強い後輩は断固として譲らない。
「だめですって。今回、先輩は重要な代役なんで、どんな些細なことでも、怪我につながることは控えるべきだと」
すると他の女子部員が口を挟む。
「あれ?でもつつじ先輩って、確か合気道もやられていましたよね?」
その場の皆、ハッとなるが、零はにっこりとしてやんわり言う。
「いや、今回の代役の件もあるし、流石に最近は控えているよ」
本当は週3でバリバリやっているんだけどね……