第1章 序章
「アッ…ッ……」
痛み以上の快感がブワァッと首筋から広がる感覚に、声が出そうになる。
先輩はしばらく堪能してから口を離し、私の首筋に付けただろうマーキングをなぞり、満足そうに眺める。
「これで少しは目覚ましになったか?」
「!」
カァァッ
両手で力一杯先輩の身体を押して離れ、首元を手で抑える。
「きゅ、急に…何ですか…仕事前に…ッ!」
「ああ。仕事中はできねェからな」
「そういう問題じゃないです…!こんな敵の根城で…な、何考えてんですか…?!」
声は抑え気味にしても、さっきのキスはあまりに刺激的過ぎて、声が裏返ってしまう。
先輩は相変わらず余裕そうな態度を崩さず、ニヤニヤとこちらの反応を楽しんでいる。
「今更キスくらいで何言ってやがる。昨日はお前から襲ってきて、挙げ句の果てに上から乗って__」
「ちがッ…!あれは…」
「おい!!そこで何をしている?!」
「!」
敵組織の人間らしき2人の男が、少し離れた先にいた。
恐らく巡回役だろう。
真夜中の暗闇で目視もしづらいため、人気を察知するのに気を抜いてしまった。
(ッ!)
パシッ
すかさず先輩の手から面を取り、顔に付け直す。
「な、おま…ッ!?」
一方の敵の前に高く跳び、両脚で敵の顔を挟む。
「!?」
ダァンッ!!
そのまま地面に後頭部を打ち付けて、相手を一瞬で気絶させた。
「だ、誰だおま……」
ギュインッ!
相手にたまげる余地すら与えず、そのまま低い体勢で相手の膝裏に衝撃を与え、跪かせた。
ダァンッ!
瞬間、頭部から踵押しを食らわす。
相方と同じように頭部の強い打撃で気絶させる。
シュタッ
私は地面についた両手にそのまま体重をかけて、反転するようにして体勢を立て直す。
半年前とは全く違う体の使い方。
敵との距離の詰め方。
女ならではの力に頼らない戦い方。
以前の私は、合気道でしか自分の身を守れなかったけど、今ではこうして容赦なく敵を討つ。
全て先輩に教えてもらった技だ。
(自分の身を守るには、障害となる相手を倒すのが一番。昔みたいに、綺麗事だけじゃ生きられないからな……)
攻撃こそ最大の防御。なんて。
膝をついて、敵が確実に気絶したのを間近で確認する。