第13章 平行世界
「帰る方法は?」
アリスの質問に、男はポツリと答える。
「一週間後、必ず戻れる」
その言葉が嘘では無いことに納得するとアリスは小さく息を吐いた。
そこで敦が口を挟む。
「でも依頼人は1か月以上別人のようだと述べる人も居たけど」
「先刻も云ったけど、似た境遇の入れ替えだから、向こう側が善かったという子もいる。その場合は再度入れ替えるんだ」
「でも、その条件だと入れ替えが成立しない時もあるってことだよね?」
アリスの質問に男は頷く。
「別世界に行きたいと思うような人でないと、相手もそう思ってないから中々上手くいかなくて」
「じゃあアリスちゃんは本当に奇跡の確率で成功したってわけか」
「……そうなるね」
男が覚悟を決めたようにアリスに向かったのは、一か八かの賭けだったのだろう。
「1週間か…一寸長いね」
「私は1週間も待てないよ」
「「!」」
突然、現れた別の声に全員がそちらを注目する。
「治兄」
「ってことで、お別れだよ」
「うん。短い間だったけどお世話になりました。中也にも宜しくお伝え下さい」
「?」
挨拶を交わす2人に、疑問符を浮かべる男。
そして、太宰がポン、と男の肩にふれると眩い光が辺りを包んだ。
光が収まると、現れたのは
「お帰りアリス」
「治?それにあっくんも」
紛れもない、此方側のアリスだった。
太宰はアリスを抱き締めると男の方も向かずに云った。
「他に君に入れ替えられた人間が側にいないと無効化は成立しないようだね」
男は、突然のことに困惑していたが、無効化の言葉で何となく理解出来たようだった。
「如何します?太宰さん」
「本人達の希望で継続している子も居るというのはねえ。因みに何人ほどだい?」
「続けて行きたいと云っている子は3人だ」
「そう。次に戻ってくる日に子供達に接触して、私がお話をしよう。それまで男の身柄はウチで拘束する」
「判りました」
太宰の判断にコクリと頷くと、敦は武装探偵社に向かって男を連行するのであった。