第13章 平行世界
「時計のバロメーターを、異能力から心身に切り替える練習をしてみればいいんじゃないかな?」
「ふむ。そんな事出来るのかい?」
「出来るよ。だって、皆、決まった条件下で異能力を発動するのに私だけ自分を犠牲にするなんておかしな話でしょう?」
「!」
確かに、と太宰は思う。
「それに気付けばきっとできる。そしたら眠りに落ちることも少なくなるよ」
「如何して断言できるんだい?」
「先刻も云ったけど、人間って食事や睡眠だけじゃなくて、幸せだなーって思っても疲労は回復するものだよ?此方側の私も皆に思われて過ごしてるならそう感じる場面は沢山ある筈。治兄と一緒に居るときなんて特にそう感じる筈だし」
「……そうだといいけど」
「そうに決まってるよ。私は中也の傍に居れて幸せだもん。此方側の私も絶対に幸せ」
アリスは笑顔でそう云うと、次の防犯カメラの前で異能力を発動させた。
眼の前のアリスが、少し大人っぽく感じたのは間違いではなかったと太宰は納得した。
時計が巻き戻ったり止まったりしていないのだ。
皆と同じようにきちんと前に進んでいるーーー。
戻ってきたら異能力の制御について話し合おうと決心する太宰。
そのためにはーーー
「虎のお兄ちゃん、地図ある?」
「はい、これ。あとペンも」
「有難うー」
アリスは渡された地図に印をつけていく。
「この辺りだと思うけど如何かな?治兄」
「……恐らく此処だ」
少し考えて、拠点を割り出す太宰。
早く自分の恋人に会いたい。
その一心で、太宰達は異能力者の確保の算段をするのだった。
太宰が割り出した場所は、小さな商店街のような場所の、元店のような建物の内の1つだった。
周りも同じ様な建物が並んでいるが、凡てシャッターが降りている。
「却説と、如何したものか」
「私がシャッターを開けて中に入る?」
「ふむ。じゃあ敦君と君が正面から、私ば他の逃走経路になりそうなところから侵入するとしよう」
「判りました」
「はーい」
そう云って太宰が姿を消す。
それを確認したあとに、アリスはシャッターに手を翳して鍵を開けた。
続く敦がシャッターを持ち上げてアリスを通し、自分が入るとシャッターから手を離して再び閉める。
アリスは用心を重ねて、鍵を掛け直した。